3年後、5年後も見据えて。就労継続支援B型を併設した事業所で、多様な選択肢から自分らしい働き方を探る【就労移行支援】
更新 2025/06/06
公開 2025/06/07
更新 2025/06/06
公開 2025/06/07
キズキビジネスカレッジとして、初の多機能型事業所である八王子校。就労移行支援事業と就労継続支援B型「キズキワークス」が同じ拠点内にあります。キズキビジネスカレッジの中で最も新しい校舎として2025年3月に開設され、都心から離れた地域の方々への支援を広げています。今回は、キズキビジネスカレッジ八王子校マネージャーの江口さまにお話をお聞きしました。
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利用者数:約14名
スタッフ(職員)数:約6名
年齢層:20~60歳台
利用者の障害の内訳:精神障害(発達障害含む)100%
利用頻度:週5日利用37.5%、週3~2回利用62.5%
時間帯:平日・土・祝 10:00-15:00
アクセス:JR「八王子駅」 より徒歩5分、京王線「京王八王子駅」より徒歩6分
ーーキズキビジネスカレッジとして、初の多機能型事業所を開設した背景を教えてください。
キズキビジネスカレッジで支援員として勤務する中で、金銭面で利用が困難になったケースをたくさん目の当たりにしてきました。就労継続支援B型事業所であれば、福祉サービスを受けながら工賃が発生するため、経済的な不安を抱える方も利用しやすくなります。キズキビジネスカレッジとしても、より多くの方にご利用いただきたいという思いから、多機能型の事業所として開設しました。
利用される方の状況に応じて利用する事業所を変更することができますので、生活リズムを整え、安定的な通所を目指す準備期はキズキワークス、実践期はキズキビジネスカレッジ八王子校を利用して集中的に就職活動を行うという使い分けも可能です。
また、キズキビジネスカレッジは都心に校舎が多く、西東京や相模原など都心から離れた地域の方々が距離を理由に利用を諦めてしまうケースが多くありました。八王子であれば、そのような希望に応えながらサポートができると考え、この地域に開設することになりました。

「自己理解を通じ、利用者の方の強みを生かせる選択肢を一緒に考えます」と話す八王子校マネージャーの江口さま
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ーーキズキビジネスカレッジ八王子校の特色はどんなところですか?
会計・英語・Webライティング・マーケティングなど多彩なスキルアップの支援はもちろん、特性に対しての最適なキャリアプランのサポートを徹底しています。就職を目指すうえでは、スキルや給与面だけでなく、会社の考え方や働き方が自分に合っているかという観点が非常に重要です。
そのため、面談を通して、どんな働き方をしたいのか一緒に整理していきます。多様な選択肢の中から、「どんな職場なら穏やかに長く安定して働けるのか」「どんな業務内容ならその人の強みを活かせるのか」を一人ひとりに寄り添いながら探っていきます。
また、就労継続支援B型事業所「キズキワークス」を併設していることも大きな特徴です。キズキワークスでは、データ入力や領収書のデータ化、助成金書類の作成など、実務に近い作業を通じて、収入を得ながら就職準備ができる環境を整えています。B型から就職を目指す方には、八王子校と同様に十分な就職サポート体制があります。

事業所を入ってすぐのスペースには、キズキビジネスカレッジとキズキワークス両方のサインスタンドがある
ーープログラムや講座はどのように進められるのでしょうか?
専門的な知識を持つスタッフが講座を担当し、その講座と個別面談を組み合わせて進めていきます。講座は対面で実施していますが、オンラインでも受講可能です。実際、八王子校を利用されている方の約半数が在宅でのサービスを利用されています。
例えば週5日の利用の中で、2日は在宅、3日は通所というハイブリッドの形も可能で、その方に適切な通所のペースを設定しています。在宅では、スケジュール管理やペース配分、環境整備などが難しい面もありますが、就労移行支援の利用期間中に、在宅勤務を想定したトレーニングができるのは大きなメリットです。
自己理解のための面談では、主に幼少期からの振り返りを行いながら、価値観の整理をしていきます。どんなことが好きで、どんなことが嫌いか、どんな出来事が自分の考えに影響を与えたかなどを掘り下げます。社会人になってからの経験も含め、やりがいを感じたことや上司に褒められたこと、逆につらかったことなども幅広く振り返ります。
面談は週1回程度、約30分行っています。話してみると、それまで気づいていなかった自分の軸や価値観が見えてくることが多く、利用者の方にとって大きな気づきの機会になっています。
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ーー自己理解の次にはどのようなステップに進むのでしょうか。
自己理解を深めたのちは、適職探しの段階に進みます。環境面、働き方、社風など幅広い観点から見ていきます。「こういう業界のこういうカラーがある会社だと、長く安定して働けるのではないか」と私たちからご提案することもありますし、利用者の方から「この企業に関心があるのですが」とご相談いただくこともあります。
自己理解を深める中で、それまで考えていなかった方向性や未経験の職種に興味を持たれる方も多いです。面談を複数回重ねながら方向性を定め、適切な求人を探していきます。さらに3年後、5年後、10年後にどうありたいかという将来ビジョンも整理し、働いた後の自分の軸もしっかりと持てるようにサポートしています。

自己理解や、多彩なスキル講座が行われるスペース。オンラインでも受講可能なものもある
ーースタッフにはどのような方がいらっしゃいますか?
現在6名のスタッフがおり、さまざまな経験を持ったスタッフが集まっています。言語聴覚士のスタッフ、盲導犬育成に携わっていたスタッフ、自動車会社での営業職経験者、エンジニア職経験者、店舗でのマネジメント経験者など多岐にわたっています。
言語聴覚士のスタッフは、コミュニケーション全般に関わるサポートが得意で、コミュニケーションの講座を開講したり、マンツーマンで面談を通して支援することもあります。
また、採用業務の経験があるスタッフもいるため、就職活動において企業目線からのアドバイスができるのも強みです。
ーーサポートにあたって大切にしていることは何ですか?
キズキビジネスカレッジ共通で大切にしているのは、「やり直すことに遅いことはない」ということです。どんなタイミングからでも、その方の希望を尊重し、叶えていけるようサポートしています。
また、仕事については「『好き』しかない仕事はない」ということも伝えています。好きな仕事と嫌いな仕事は、割合のバランスを見て、例えば「好きな仕事が6割、嫌いな仕事が4割くらいなら頑張れるかも」といった形で、長く安定して働くにはどうしたらいいかを一緒に考えています。
八王子校として、とくに大切にしているのは「話しやすさ」です。利用者の方と一日の中で必ずコミュニケーションを取り、話しかけやすい雰囲気づくりを心がけています。オンラインでご利用の方とも朝に短時間でもお話する機会を設け、週1回は30分程度の面談を実施するなど、コミュニケーションを密に取れる環境を整えています。

広々としたスペースを区切り、キズキビジネスカレッジとキズキワークスの両方で使用
ーー利用者の方と向き合う中で、印象に残っているエピソードはありますか?
開所してまだ日は浅いですが、利用者の方の変化を感じることが多くあります。自己理解、特性の理解を深めていく中で考え方が変わる方もいますし、利用し始めた頃は閉じこもりがちだった方が、徐々にコミュニケーションを取れるようになってきたケースも少なくありません。
精神疾患がある方は、明るい表情をつくることやコミュニケーションを取ること自体が負担になる場合もあります。しかし、日々少しずつ声をかけ続けることで、自分から話しかけてくれるようになったり、表情が明るくなってきたりといった変化が見られます。短い期間でも、一人ひとりの小さな変化を大切にしています。
ーー利用を考えている方へのメッセージをお願いします。
キズキビジネスカレッジでは、一人ひとりのペースや希望に寄り添いながら就職に向けたサポートを行っています。面談や日々のコミュニケーションを通して、本当に自分に適している場所はどこなのかを一緒に探していきます。行動を始めるのに遅いことはありません。その方らしい働き方を見つけるお手伝いができたらうれしいです。
就労移行支援と就労継続支援B型、選択肢を活かし自分らしい働き方を見つけて
自分自身の価値観の掘り下げや障害による特性の理解など、深い自己理解ができるキズキビジネスカレッジの持ち味に、就労継続支援B型事業所の併設という選択肢も加わった八王子校。就職活動中の金銭面を心配されていた方や、実際の仕事の中で「働く感覚」を取り戻していきたいと考える方にとっては、朗報となるのではないでしょうか。
また、対面でもオンラインでもコミュニケーションを大切にし、利用者の方が「自分の軸」を持てるようにサポートされている点は、就労移行支援を離れた後も、利用者の方の大きな支えになりそうです。
※この記事は、2025年4月の取材に基づいています。
執筆 : LITALICO仕事ナビ施設取材
就労移行支援・就労継続支援A型・B型の事業所の生の声をお届け!事業所・利用者の方へのインタビューをもとに、各事業所の特徴や力を入れている取り組みなどをご紹介します。