大人の起立性調節障害とは?症状や治療内容、仕事での対処法を紹介

更新 2025/05/02 公開 2019/07/24
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自分の意思に反して起きることが難しいときは、起立性調節障害という自律神経の機能不全による症状かもしれません。思春期に多くみられると言われていますが、大人にも発症し、仕事や日常生活での困りごとが多くなる場合があります。この記事では、起立性調節障害の症状や治療法、対処法などを解説します。
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目次

  1. 起立性調節障害とは
  2. 大人の起立性調節障害の症状
  3. 起立性調節障害の原因やきっかけは?
  4. 起立性調節障害の診断
  5. 起立性調節障害の治療法
  6. 起立性調節障害と診断された場合の対処法
  7. まとめ

起立性調節障害とは


起立性調節障害とはOD(=Orthostatic Dysregulation)とも呼ばれ、自律神経のバランスが崩れて、身体にさまざまな不調が生じる疾患です。朝なかなか起きられない、立っているのがつらい、起床時や立ち上がったときの立ちくらみや頭痛、動悸、倦怠感など、さまざまな症状が表れます。

小学校高学年から高校生にかけての思春期で、この起立性調節障害に悩むことが多いと言われています。しかし大人も発症することがあるため、この記事では主に大人の起立性調節障害についてご紹介します。

大人も起立性調節障害が発症することがある

前述の通り、一般的には思春期にかけて起こりやすいと言われていますが、もともと自律神経のバランスが乱れやすい人などは、小児思春期に症状がなくても、大人になってから精神的なストレスや環境の変化などが加わることによって発症することがあります。

大人が起立性調節障害を発症すると、仕事や日常生活での困りごとも多くなる場合があります。特に午前中は症状が強く出るため、会社に遅刻してしまう、朝にやらなければならないことがはかどらない、といった困りごとにつながる人もいます。

また午後からは症状が回復することが多いため、怠けていると周りから誤解され生活に影響が出る、または自分でも症状に気付きにくいという場合があります。

困りごとが増えるとそれがストレスとなり、さらに自律神経の乱れを生む場合もあるため、早期発見と早期の治療が重要です。

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大人の起立性調節障害の症状


出典:amanaimages

起立性調節障害の主な症状としては、具体的に次のようなものがあります。


  • 長時間立っているのがつらい
  • 朝なかなか起きられない
  • 立ち上がったときや立っているときに、気分が悪くなる、失神することがある
  • 朝に目は覚めるが、頭痛やめまい、倦怠感で起きられない午前中だけ体調が悪いことが多い
  • エレベーターの中や立ちっぱなしが求められる場面で立っているのがつらい、めまいや立ちくらみを起こしやすい
  • 少し階段を登ったり、歩き回ったり動いたりしただけで動悸がする
  • イライラしたり、集中力が低下したりする
  • いつも体がだるい、疲れやすい、食欲がない など

重症化するとこれらの症状が毎日起こり、日常生活や仕事に支障をきたすようになります。

また、起立性調節障害は症状別に主に4つのサブタイプに分類されます。このサブタイプがわかると、治療に使用する薬や対応方法を決めることができます。

起立性調節障害のサブタイプ

1.起立直後性低血圧

最もよくみられるサブタイプです。立ち上がったとき血圧が大きく下がり、その後の回復が遅れ、脳の血流が低下している状態になるため、立ちくらみやめまい、ふらつき、動悸などさまざまな症状が表れます。

2.体位性頻脈症候群

血圧低下を伴わず、立っているときに著しく心拍数が増加し、ふらつきや倦怠感、頭痛などを引き起こします。起立直後性低血圧の次に多いタイプとされています。

3.血管迷走性失神

立っているときに突然の血圧低下と脳貧血が起きることで、めまいや吐き気、冷や汗などの症状が出ます。ひどい場合には気を失い、突然倒れることもあります。起立直後性低血圧や体位性頻脈症候群を伴って発症する場合もあります。

4.遷延性起立性低血圧

立ち上がった直後はなにもないのですが、そのまま立っていると数分後に血圧が低下しはじめ、ふらつきや立ちくらみなどが起こります。
この他にもいくつかタイプがあり、症状は人によって異なるため、医療機関で診てもらいましょう。

起立性調節障害とうつ病の違い

起立性調整障害は、意欲や集中力の低下、食欲低下、精神不安など、症状に共通点が多い「うつ病」との区別が難しく、またうつ状態が合併することもあるため、注意が必要です。

起立性調節障害の症状の特徴は、午前中に症状が現れ、昼、夕方と時間が経つにつれて回復していくことが多いですが、うつ病の症状は昼夜問わずみられます。

うつ病の薬を服用すると、かえって起立性調節障害(OD)の症状を悪化させてしまう場合もあるため、注意が必要です。


起立性調節障害の原因やきっかけは?


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通常、人は立ち上がると血圧の低下や心拍数の増加が起こり、それらの変化ができるだけ少なくなるよう自律神経が働きます。しかし、なんらかの要因でその働きがうまくいかず、さまざまな症状が表れるのが、起立性調節障害です。

起立性調節障害の原因

起立性調節障害の原因は自律神経系のバランスの崩れだと考えられていますが、明確には解明されていません。

大人の場合には、職場でのストレスや環境が変わるなど生活習慣の乱れなどで、自律神経系のバランスが崩れることがあります。また、別の疾患が発症の背景にあることも考えられます。

起立性調節障害になりやすい人の例

自立神経が乱れやすい人

個人差がありますが、もともと朝起きるのが苦手であったり、人より立ちくらみやめまいを感じることが多いといった、生まれつき自律神経の働きが弱いケースです。比較的調子が良いとき、悪いときと、日によって異なることがあります。

精神的なストレスの多い環境にいる人

仕事や対人関係のストレスをためやすいケースです。例えば、威圧的な上司や同僚がいる、残業が多いなど、精神的なストレスの多い職場で働いている場合には、自律神経が乱れやすくなる場合があります。

天気や気圧の影響で体調が悪くなる人

天気や気圧の変動によって自律神経が乱れるケースです。気温が高くなり汗をかきやすい春から夏にかけてや、雨の日に悪化することが多いでしょう。汗をかくことで水分や塩分が失われたり、低気圧に伴い血圧が低下したりすることで発症しやすくなる場合があります。

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起立性調節障害の診断


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起立性調節障害かもしれない、と思ったときにどこの医療機関を受診したら良いでしょうか。診断の流れも紹介します。

大人の起立性調節障害は何科を受診する?

起立性調節障害の疑いがある場合には、最もつらい症状にあわせて、循環器内科、神経内科、心療内科などを受診すると良いでしょう。

例えば、起立時の血圧や脈拍の増減による動悸や倦怠感が気になる場合は循環器内科、精神的なストレスが強い場合は心療内科など、それぞれの症状が診察できる医療機関を受診しましょう。

今の症状にどの医療機関が対応しているかわからない場合、まずは一般内科や総合内科の受診をおすすめします。

診断の流れ

まずは、症状の種類やその程度について問診を受けます。具体的には、定められた11症状のうち3つ以上に当てはまり、さらにサブタイプのいずれかに当てはまるかを確認します。

次に、血液検査や心電図検査で、貧血や不整脈などほかの疾患の可能性がないかを調べます。これらの検査の結果、他の疾患の可能性がないであろうと判断された場合、「新起立試験」という検査を行ってサブタイプを診断します。

起立性調節障害の治療法


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起立性調節障害と診断されたら、症状の程度やサブタイプ、心理的負担にあわせて治療法を組み合わせ、いくつかのステップを踏んで治療を行います。

起立性調節障害は、完治することにこだわらず、症状とうまく付き合っていくことが大切です。そのために、非薬物療法をまず行い、それだけでは改善しにくい場合などに薬物療法を併用するケースが多いようです。

非薬物療法

日常生活で意識して、少しずつ改善していく治療法です。具体的には以下のような方法があります。

  • 水分を多く摂る
  • 散歩程度の運動をする
  • ゆっくり起き上がるようにする
  • 暑い場所に長時間いない
  • 血圧低下を防止するストッキングやバンドを使う など

ストレスを強く感じている場合は心理療法を行い、臨床心理士や専門の医師によってカウンセリングを行う場合もあります。

薬物療法

非薬物療法で改善しない場合や、立っているのが難しいなど日常生活に大きな支障をきたすような、重症の場合には、薬物療法も行います。血管を収縮させたり、交感神経の作用を高めて血圧を上げる薬を用いることが多いようです。

起立性調節障害と診断された場合の対処法


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起立性調節障害が原因で、仕事や日常生活に影響が出ている場合もあるでしょう。その日の天気や季節によっても症状は変化するため、症状が軽い日や重い日があり、気長に付き合う必要があります。

重症度は一人ひとりによって異なり、回復までに時間がかかることもあります。日常生活に大きな支障をきたすことがない状態を目指して、病気を理解し、日々の生活でできる工夫をしながら、焦ることなく自分のペースで治療を続けていきましょう。

早めの治療と治療の継続

症状が気になったら、早めに医療機関を受診しましょう。症状を放置し続けると、めまいや立ちくらみ、頭痛などの症状が悪化し、朝起き上がることができないなど、日常生活に大きな影響が出る場合があります。

早期に医療機関へ相談し、早期に治療を開始することにより、数か月で改善することもあります。状態が悪化してしまうと、治療も難しくなることがあるため、早めの受診、早期の治療とその継続が大切です。

職場や周りの人に理解・協力してもらうことが大切

起立性調節障害は体の疾患であるということや、さまざまな症状が出てくるということを、職場や家族、周囲の人などに伝えることも大切です。
起立性調節障害についてあまり知らない人が近くにいる場合、本人の意思ではない身体的な疾患であることを理解してもらうよう、話す機会を設けたり、必要に応じて職場の環境調整(合理的配慮)を行うよう相談をすることも検討します。

仕事に影響が出ている場合は、医師に診断書の作成を依頼し、診断結果の数値やデータをもとに相談してもよいでしょう。自分から上司に相談することが難しい状況であれば、産業医を通して提案できる場合もあります。



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就労ができないときの経済的なサポート

休職や退職によって働けないときに利用できる、経済的なサポート制度を紹介します。

傷病手当金

病気やケガなどで働けないとき、仕事を休んでいる間の生活を支える目的で、給与の一部にあたる金額が健康保険から支給される制度です。

会社で加入している健康保険の被保険者であれば、正社員のほか、アルバイトや派遣社員も支給対象となります。連続して4日間以上仕事を休んだ場合、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。しばらく休職した後に退職する場合でも、条件を満たせば、引き続き残りの期間について傷病手当金を受け取ることが可能です。詳しくは、勤務先企業の人事担当者に相談しましょう。

なお、自営業者などが加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度はありません。



参考
全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」

失業保険給付金

雇用保険制度に基づいた手当のことで、いくつかの条件を満たしている場合、退職し転職活動を行う際に受給できます。金額は在職中給与の約50~80%、給付を受けられる期間は90日~360日の間で、退職時の年齢や雇用保険への加入年数、離職理由などによって決められます。




まとめ


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起立性調節障害は、体質や環境の変化により自律神経のバランスが崩れ、体調不良が生じている疾患です。

大人の場合、朝起きられなかったり、午前中に体調が悪かったりすることで、仕事や日常生活に影響が出ることがあります。体の違和感を感じたら、まずは内科や循環器科、心療内科など医療機関の受診をおすすめします。

また、症状が出ても適切な治療を行えば十分回復する病気でもあります。自律神経のバランスを崩しやすい体質の改善には時間がかかることもあるので、治療は長い目で捉え、周りの人に理解と協力を求めることが望ましいでしょう。

あまり無理はせず、自分に合った生活リズムや体調を管理するコツをみつけることが大切です。

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参考
一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害とは?子ども・大人別に特徴を解説」 日本小児心身医学会「起立性調節障害(OD)」
日本小児心身医学会「起立性調節障害(OD)」
ヘルスケアラボ「ふらふらする・疲れやすい(起立性調節障害)」




監修者の写真
監修 : 汐田まどか
小児科医・医学博士
日本小児精神神経学会理事
専門領域は発達行動小児科学
執筆者の写真
執筆 : LITALICO仕事ナビ
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