パニック障害とは?症状、治療、再発防止、仕事や日常生活をスムーズにおくるには?

2018/03/26
パニック障害は、何の前ぶれもなく激しい動悸や呼吸困難、めまいなどの症状に、強い不安感を伴った発作に襲われる病気です。何度も発作を繰り返す方も多く、日常生活にも支障をきたす場合もあります。この記事では、パニック障害に対する基本的な知識を整理した上で、治療法や仕事を続けるに際して役立つポイントなどを紹介します。

目次

  1. パニック障害とは?
  2. パニック発作の原因とは?
  3. パニック障害の治療
  4. パニック障害と仕事について
  5. パニック障害とうまく付き合うためには?
  6. まとめ

パニック障害とは?

出典 : amanaimages
パニック障害は、ある日突然、理由のない強い不安感や恐怖感を感じ、それと共に、激しい動悸や息切れ、呼吸困難、めまい、発汗などの様々な身体的症状に襲われ、それを何度も繰り返すようになる精神障害の1つです。

100人に2~4人は発病の可能性があるポピュラーな病気であるにもかかわらず、日本ではまだ十分に理解されているとは言い難いのが現状です。

パニック障害という病気そのものは昔からありましたが、かつては「心臓神経症」「不安神経症」といった名称で扱われていました。近年になってから、他の神経症とはっきり区別する意図で「パニック障害」と名付けられ、徐々に病気の存在が広く認められるようになりました。
参考 : 坪井康次監修 「パニック障害 正しい知識とケア P16」

パニック障害の症状

パニック障害の典型的な症状が「パニック発作」です。突如として理由のない不安感が押し寄せ、それとともに激しい動悸やめまい、呼吸困難に襲われます。人によっては、手足の震えやしびれ、吐き気、胸痛、喉のつかえや知覚異常などの激しい苦しみを伴うケースもあり、死の恐怖を感じる人も大勢います。

パニック発作の主な症状としては次のようなものがあります。

動悸、息の乱れ、胸部の痛み

ただ単に心臓がドキドキするという程度ではなく、多くの場合、心臓が破裂する、わしづかみにされるといった激しい言い方で表現されます。呼吸が速くなったり荒くなったりすることで息をすることが困難な状態に陥る場合があります。
人によっては息の吸い方や吐き方がわからなくなるケースもあり、窒息するのではないか、死んでしまうのではないかという恐怖に苛まれます。また、胸の一部がチクっとした痛みを感じたり、ムカムカと不快に感じることもあります。

手足の震え、めまい・ふらつき

手足、あるいは全身の筋肉が強く緊張し、自分の意思とは関係なしに震えを起こします。めまいも、目が回るというよりはフラフラするような感じだといいます。「頭から血が引いていく」「頭を強く後ろに引っ張られる」など、人によって様々な表現がされます。

発汗・冷や汗

暑さが原因ではなく、不安感や恐怖心から発汗します。冷や汗をかくことでさらに不吉な感覚が生まれ、不安と恐怖を増長させるという悪循環になります。

口の渇き、吐き気、腹部の不快感

のどがカラカラになり、口の中が乾いて息苦しさを伴うこともあります。胃を掴まれたような、あるいはお腹の中をぐちゃぐちゃにされたような不快感を感じて強い吐き気に襲われる人が多く、実際に嘔吐してしまう人もいます。

発狂するのではないかという恐怖感

異常な不安感と恐怖感から、自分はこのまま頭がおかしくなってしまうのではないか、あるいは人前でとんでもない行動を起こしてしまうのではないかと強く恐れるようになります。


パニック発作で死ぬことは決してありませんが、恐怖感が心筋梗塞に近いとまで言われています。

予期不安

パニック症状は、再発する可能性が高い症状です。何度も発作を繰り返すうちに、発作が起きていないときも、次に起こる発作を予想してしまい、常にいつ発作が起きるかもしれないという不安感と恐怖感にとらわれてしまいます。これはパニック障害の「予期不安」という症状です。

広場恐怖

次に起きるのが「広場恐怖症」です。「広場」というのは広い場所のことではなく「逃げられない場所」「助けを求められない場所」という意味です。

予期不安が生じるようになるに伴い、おのずと発作を起こした場所や状況を恐れるようになり、それを避けるようになります。

これを回避行動と呼び、やがて実際に自分が恐れる場所に近づいただけで動悸が走ったり、吐き気や呼吸困難などに見舞われるようになります。これが広場恐怖症です。

広場恐怖症はパニック障害のある方すべてが発症するわけではありませんが、少なくとも80%以上の方に伴う症状とされています。
参考 : 坪井康次監修 「パニック障害 正しい知識とケア P29」

パニック発作の原因とは?

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「パニック」はなぜ起こるの?

パニック障害の原因については実際のところまだ完全に解明されていませんが、発作が起こるメカニズムについては、解明がされています。

人の自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は身体を動かす神経、副交感神経は休める神経です。この交感神経が身体への危険を察知して興奮することで発作が起きるのです。

人の脳には、危険を察知した際に警告を発するしくみがあり、身の回りで起きた敵や有害物質に対する情報を脳に送ります。パニック障害のある方は、この警報システムが誤作動を起こすことで、実際には起きていない危険情報によって生じた恐怖心が自律神経へと伝えられ、交感神経が誤った興奮状態となってしまうことで発作が起こる、という説が有力になっています。

また、病気を引き起こすきっかけになりがちなものに、ストレスの存在があります。パニック障害の直接の原因かどうかはまだはっきりしないものの、ストレスを感じやすい人やストレスへの対処の苦手な人はパニック障害を発症しやすいというデータがあります。

その他のきっかけとして、私たちの身の回りに様々な、パニック発作を誘発する可能性があるとされる物質があります。タバコ(ニコチン)、コーヒー(カフェイン)、アルコール、薬物(咳止め、経口避妊薬、覚せい剤)などが誘発物質として挙げられる他、睡眠不足、低血糖、疲労、蛍光灯、熱気や湿気、リラクゼーションなどでもパニック発作を誘発することがあります。

パニック障害のある方には、家族にも同じくパニック障害のある人がいる場合も見られることから、家族性や遺伝性を心配する方もいるようです。

しかしパニック障害は決して遺伝だけで発症するわけではありません。不安を持ちやすい素因を受け継ぐことはあってもそれだけで発症することはなく、そこに環境やストレスなどの後天的な外因が加わることではじめて起きる病気です。
参考 : 山田和男著 「パニック障害の治し方がわかる本 P48」

検査しても異常が見つからない場合

パニック障害を発症した方の大半がまずは救急外来、もしくは内科を受診するため、本人は辛くて苦しい状態であるにもかかわらず「異常なし」と診断されてしまうことが少なくありません。

もちろん、体に起きている症状が身体的な病気でないと確認された上ではじめてパニック障害の診断へと進むのですから、身体的な異常があるかないかを調べるのは重要なことです。しかし、検査の結果、パニック障害であると正しく診断されるとは限りません。体の異常や他の病気が見つからなかった時点で、早めに精神科を受診することが完治への早道であると言えます。

しかし、せっかく勇気を出して精神科を受診しても、間違った診断を下されるケースがあります。パニック障害がある程度認知された現在でも誤診を受けることは少なくなく、間違われやすい病名としては以下のようなものが挙げられます。
  • 心臓神経症
  • 不安神経症
  • 自律神経失調症
  • メニエール病
  • 過換気症候群
  • 狭心症
  • 不整脈
  • てんかん
  • バセドウ病
  • 低血糖症
パニック障害は発見が遅れれば遅れるほど病状が悪化し、治療も困難になります。そのため、もし上記に挙げたような病名で診断されたとしても、パニック障害が疑われる場合は、一度きちんとパニック障害の専門医がいる病院を再受診してみると良いかもしれません。

発達障害との関係性

厚労省の調査では、発達障害であることに気付かないまま大人になるケースが全体の半数近くに上るとされています。いわば隠れ発達障害の人が二次障害としてパニック障害を併発すると、発達障害が原因で発症したものだと気づきにくく、結果としてパニック障害の治療のみを受け続けることになり、発達障害であることがますます見過ごされてしまう危険性が高まります。

発達障害のある人が、パニック障害やうつ病、依存症などの二次障害を合併してしまうと、社会の適応に大変な苦労を強いられる場合がしばしばあります。

きちんとした正しい治療を続けているにもかかわらず、なかなかパニック障害の症状が改善しない場合は、発達障害が後ろに隠れている可能性もあります。一度発達障害の専門医に相談してみることで、もし発達障害が発見されれば、どちらの症状の改善にも役立ちます。
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参考 : NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク 「発達障害者の就労相談ハンドブック」 参考 : 星野仁彦 「発達障害に気づかない大人たち<職場編>」

パニック障害の治療

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パニック障害の改善には正しい治療を受けることが一番の近道です。逆に適切な診断がなされずに治療が遅れれば遅れるほど病状は悪化、慢性化し、一層治療が難しくなります。そのため、良い医師を見つけることが一番大切になります。

正しい診断が下されたのち、パニック障害の治療には大きく分けて薬物療法と認知行動療法(精神療法)の2つがあります。

この2つは単独で行っても有効ですが、一般的には併用することでより高い効果を得ることができるとされています。現在の治療法では、まずは薬で発作などの症状を軽くしてから認知行動療法を行うことが最も有効な治療法として推奨されています。

薬物療法

発症の初期段階や急性のときには抗うつ剤や抗不安薬などの薬物療法が有効になります。パニック発作は薬物治療で多くが抑えることができるとされており、発作がなくなることで予期不安もなくなり、生活へ支障をきたすことは減ります。

薬物治療にはいくつかのステップがあります。最初のステップではパニック発作を抑えることを最大の目的とする治療で、服薬で様子を見ながら、自分に合った服薬量を探り出すことを目指します。症状や薬の効き目を注意深く観察しながら薬の種類や量を調整していきます。

次に、一定量の薬物投与を続けながら様子を見ます。短ければ数ヶ月ですが、長くかかる場合は1〜2年に及ぶときもあります。
参考 : 渡部芳徳 「パニック障害は治る(主婦の友社)P81」
パニック障害の治療に使われる薬には主として
  • パニック発作を抑えるもの(抗不安薬)
  • パニック発作に対する不安や心配を抑えるもの(抗うつ薬)
の2種類があります。
薬物療法には、
  • 発作を予防、コントロールすることができる
  • 不安感や抑うつを消すことができる
  • 効き目に即効性がある
  • 飲むだけなので取り組みやすい
などのメリットがある一方、薬の種類によっては、吐き気や下痢などの副作用が出ることや、服薬を中止すると再発しやすいこと、薬の種類によっては妊娠や授乳に影響があるなどのデメリットも指摘されています。

また、パニック障害が長期間に及んだ場合、薬をずっと飲み続けることに不安や抵抗を感じる人も多いようです。パニック障害の治療薬は脳に作用する効果を持つため、長期間飲み続けると脳に悪影響があるのではないかと心配し、自己判断で服薬をやめたりする人もいます。

薬物療法は自己判断で中止すると離脱症状が出現したり、再発しやすくなったりする場合もあります。また、症状が良くならないからと自己判断で増量することで、副作用が強く出たり、薬に依存してしまったりする場合もあります。

薬物療法を行う際は、自己判断で止めたり、減らしたり、増やしたりするのではなく、心配なことがあれば医師と相談しながら量を調整していきましょう。

認知行動療法

現在、パニック障害の治療は薬物療法が主流ですが、薬の力のみで心の動きまで治すことはできません。
認知行動療法には大きく分けて
  • 心理教育(カウンセリング)
  • 認知行動療法
  • 自律訓練法
の3つがあり、中心となるのが認知行動療法です。

思うように症状が改善せず、病気が長期間に及ぶうちに、不安感は一層高まり、思考も後ろ向きになりがちです。

認知行動療法を行う際、まずはカウンセリング(心理教育)で病気への理解を深め、生活環境を洗い出します。いわゆる「心の土台」を作ったのちに認知行動療法を行うことで、自分自身で不安を解消する経験が身につくようになります。

自律訓練法はドイツの精神科医シュルツにより考案されたリラックス法で自分でリラックス状態を作れるようになることを目指すものです。これにより、緊張を和らげて精神を安定させることでうつや不安感の解消に役立ちます。
参考 : 山田和男 「パニック障害の治し方がわかる本」参考 : 兵庫教育大学 「教員養成大学における授業科目 「ソルフェージュ」 に及ぼす自律訓練法の効果に関する研究(pdf)」
精神療法には薬物治療のような副作用や依存性もなく、パニック障害の治療や再発防止、社会復帰に特に高い効果が認められています。患者さんの中には、一度も薬の力に頼らず、精神療法のみで完治する方も少なくありません。

パニック障害と仕事について

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パニック障害は人によって症状の度合いや完治までの日数にかなり開きがあります。そのため、治療の負担が大きかったり、症状が重い場合、
  • 思い切って休職する
  • 仕事量をセーブする
という方法も一つの手立てです。
パニック障害を発症する人は真面目で頑張り屋であることが多く、それまで仕事を熱心にしていた人ほど仕事を休むことがマイナス思考に働きかけ、落ち込みに拍車がかかってしまうことも少なくありません。そうなる前に、長期的な視点に立って仕事をどうするのがよいのかを含め、職場の上司、また医師やカウンセラーにも十分相談してみましょう。

就職や職場定着をサポートする「就労移行支援」

就職活動や仕事を続けることに不安がある方は、働くための知識や能力を身につけることができる就労移行支援サービスを利用することができます。

仕事を続ける上では、体調管理やストレスコントロールなどが重要です。就労移行支援事業所では、そういったセルフマネージメントができるようになるためのサポートもしています。

利用の申し込みは、市区町村の障害福祉窓口で行います。障害者手帳がなくても利用できる場合もありますので、窓口に問い合わせてみてください。LITALICO仕事ナビでは全国の就労移行支援事業所を掲載しており、ご自身にぴったりの事業所を探すことができます。
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パニック障害とうまく付き合うためには?

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パニック障害の大敵は、ストレスです。ストレスはパニック障害の発症のきっかけとなるだけでなく、症状を悪化させたり、発作の引き金となることもあります。そのため、自分なりのストレス解消法を見つけて、ストレスを溜め込まない工夫をすることで症状の解消に効果を発揮します。

主な対処法には次のようなものがあります。

楽な姿勢をとる

発作が起きたら、まず床に腹ばいになり、ひじを曲げた腕の中に頭を入れます。あるいは、椅子に腰掛けて、頭が膝の間に入るくらいまで前かがみに頭を下げます。こうすることで、自然と腹式呼吸になり、過呼吸を改善して自律神経をしずめてくれます。

息は吸うより吐く

過呼吸とは、身体の中の二酸化炭素が増えすぎてしまった状態です。にもかかわらず、息が苦しくなるため、必要以上に息を吸おうとしがちになり、ますます苦しくなります。まずは吸うのと吐くのを1:2くらいの割合になるように心がけ、息を吐くときはなるべく長い息を吐くように1回の呼吸に10秒くらい時間をかけます。

神経が安らぐツボを覚えておく

手のひらを上にした状態で手首を曲げると、手首に横ジワが出てきます。そのシワの小指のあたりに小さな骨にあたるくぼみがあります。ここは「神門」というツボで、神経を休めて心を落ち着かせる効果があります。親指の腹をツボに当て、手首の中心に向かって3秒間押します。これを何回か繰り返し、左右同様に行います。

まとめ

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正しい治療法を根気よく続けていても、なかなか良くならなかったり、あるいは後戻りしているように感じてしまうことはあります。しかし、パニック障害の治療に限らず、努力していてもうまくいかなかったりすることはよくあることです。そんなときは回復への1つの段階と思ってください。

また、もし治療をなまけてしまっても、すべてをマイナスにとらえるのではなく、人は誰でもなまけることがあるのだから、またやっていこうとポジティブに考えることが大切です。

パニック障害は必ず治る病気です。早く治療を始めただけ、回復も早まりますが、回復にかかる時間は人それぞれです。治療に一番大切なのは、自分自身の治りたい、治そうという強い意志です。どんなに病気が長引いてもあきらめず、前向きに取り組んでいくことが回復への早道です。
参考 : 渡部芳徳 「パニック障害は治る」参考 : 貝谷久宣(監修) 「パニック障害 治療・ケアに役立つ実例集」参考 : 山田和男 「パニック障害の治し方がわかる本」参考 : 坪井 康次 (監修) 「パニック障害 正しい知識とケア」参考 : NPO法人全国パニック障害の会 「「パニック障害」と言われたら!」参考 : 星野仁彦 「発達障害に気づかない大人たち<職場編>」
監修 : 増田史
精神科医、医学博士
慶應義塾大学 精神・神経科学教室 特任助教
滋賀医科大学 精神医学講座 客員助手

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