障害福祉サービスの受給者証(以下、受給者証)とは、障害のある人が希望する障害福祉サービスを受けるために、行政へ給付の申請をした際に発行される認定証のことです。受給者証には利用者が受けるサービスの内容や期間などが記載されており、利用者はこの受給者証に基づいてサービスを受けることができます。
そのため、障害福祉サービスの利用を希望する際は受給者証が必要になります。
受給者証には期限があり、続けてサービスを受けるためには定期的に更新をしなくてはなりません。
受給者証に似たものとして障害者手帳を思い浮かべる人も多いと思いますが、これらは全く別のものです。交付目的や発行機関に違いがあります。
障害者手帳は、障害のある人が取得できる手帳の総称です。自立と社会活動への参加を促進するために交付されており、都道府県が交付します。
受給者証は、障害福祉サービスを利用するために必要な証明書であり、市区町村が交付します。障害者手帳を取得できなかった場合でも、受給者証は交付される可能性はありますので、市区町村の担当窓口に相談しましょう。
受給者証の色やデザインは市区町村によって違いますが、A3やA4サイズの紙を折り畳んだ形状のものが多く見られ、カードサイズのところもあります。記載事項は市区町村や受けるサービスによって違いがありますが、おおむね以下のような項目が記載されています。
受給者証番号
受給者の氏名や住所、性別、生年月日
交付した市区町村名と印
障害支援区分
認定有効期間
サービスの種別
支給決定内容(支給量、支給期間、事業所名など)
利用者負担額 など
支給決定内容は、支援を受けるサービスごとに明記されており、特記事項や支給期間中の内容変更を記載するための予備欄などがあります。
受給者証に記載されている項目のひとつに「支給量」があります。
支給量とは、支援を利用できる1ヶ月あたりの日数のことです。その日数の中でサービス提供事業者からサービスを受けます。複数の事業所を利用する場合は、すべての利用日数の合計が支給量を超えないようにします。
支給量は、受給者証を申請する時に提出する、医師からの意見書などを踏まえて、サービスの種別ごとに自治体が判断します。
例えば就労移行支援の支給量の場合、原則「当該月の日数から8日を控除した日数/月」(例:8月なら23日、9月なら22日)と決まっていますが、必要だと認められる場合は、支給量が増える場合もあります。
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受給者証を受け取るためには、まず障害福祉サービスの対象者としての要件を満たす必要があります。
身体障害者
知的障害者
精神障害者(発達障害者を含む)
難病など一定の障害のある人 ※令和5年8月現在、366疾病が対象
その上で、希望するサービスの利用が適切かを判断する市区町村の認定調査を経て、受給者証が交付されます。また、発達障害の診断がある人も障害福祉サービスの対象です。
受給者証で受けられる障害福祉サービスには、利用者が地域で自分らしく生活できるように、さまざまな支援があります。
訪問系サービス:居宅介護や訪問介護 など
日中活動系サービス:自立訓練や就労支援 など
施設系サービス:施設入所支援
居住支援系サービス:自立生活援助 など
訓練・就労系:自立訓練や就労移行支援 など
介護の支援を受ける場合には「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合は「訓練等給付」に分類されていて、サービスや地域によって対象者や申請手順が異なります。
この記事では、主に就労支援サービスを受けるための受給者証申請について、解説していきます。
障害福祉サービスを利用する際には、利用者の自己負担が発生する場合もあります。自己負担月額は、前年の世帯所得に応じて以下のように上限額が決まっており、それ以上の費用を負担することはありません。この場合の世帯所得とは、本人と配偶者の所得の合計であり、世帯が別の親の所得は入りません。
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障害福祉サービスの受給者証を取得する何よりも大きなメリットは、障害福祉サービスを利用できるということです。障害福祉サービスには日常生活や社会生活を自立して送るためのさまざまなサービスがあり、これらは受給者証を取得しなければ利用できません。
デメリットは特にありませんが、受給者証の発行には時間がかかります。自治体によっても違いますが、申請から発行までに1~2ヶ月ほどかかるケースが多いでしょう。
申請をした後は、受給者証を発行するための資料となる認定調査やサービス等利用計画案の作成と提出などを経て支給決定となるためです。発行までの詳しい流れについては後述します。
受給者証の申請には、主に下記のものが必要になります。
印鑑
氏名、住所がわかるもの
障害や疾患が把握できる診断書や障害者手帳
また、利用者の状況や自治体によっては、収入が分かる書類など、ほかに必要なものがある場合があります。事前に電話で問い合わせたり、担当窓口を訪ねてみるとよいでしょう。
ここでは例として、就労支援サービスの給付を申請し、受給者証をもらうまでの流れについてご紹介します。
利用を希望する本人(家族や代理人でも可)が指定の窓口で申請を行います。受付窓口はお住まいの市区町村の障害保健福祉課や障害福祉課などです。
前述の通り、申請の際にいくつか書類を求められることがあります。できるだけ少ないやりとりで済むよう、何が必要か事前に問い合わせておくとスムーズです。
具体的には、認定調査員が利用希望者を訪問し、サービス利用についての意向や日中の活動状況を聞いたり、心身の状況を総合的に判定するための質問をしたりします。
以下のような80の調査項目に基づいて行われ、それらが受給者証を発行するための資料になります。
移動や動作等に関連する項目(12項目):歩行、衣類の着脱 など
身の回りの世話や日常生活等に関連する項目(16項目):食事、入浴 など
意思疎通等に関連する項目(6項目):視力、聴力 など
行動障害に関連する項目(34項目):物忘れ、こだわり など
特別な医療に関連する項目(12項目):点滴の管理、透析 など
市区町村の窓口担当からサービス等利用計画案の作成依頼がきます。指定特定相談支援事業者(障害のある人やその家族が障害福祉サービスを利用するにあたって、相談ができる窓口)、もしくは自分自身で作成したものを提出します。給付が決定した後はこの計画書に沿って支援が行われます。
指定特定相談支援事業者に依頼すると、作成の負担が軽くなり、支給が決まった後のサービス等利用計画の見直し(モニタリング)もスムーズです。
最長2ヶ月間、実際にサービスを体験利用できる「暫定支給の決定」がある場合もあります。そのサービスが自分にとって合っているのかを判断したり、支援内容の調整などが行われたりします。
利用者に利用サービスの内容が通知され、受給者証が発行されます。お住まいの市区町村によって異なりますが、申請から支給決定までには2ヶ月程度かかることが多いようです。
受給者証が発行されたら、サービス事業所と利用契約を結び、利用がスタートします。ここでは発行後の注意点について解説します。
受給者証には有効期限があります。支給決定期間の終了後もサービスを延長して利用したい場合は、更新手続きが必要になります。
自治体によって異なりますが、受給者証の有効期限の2、3ヶ月前から更新の案内が届きます。案内が来たら必要な申請書類に記入し、担当窓口で更新手続きを行いましょう。前述の通り、発行までには時間がかかりますので、早めに手続きをしておくと安心です。
サービスの支給期間内に氏名の変更があったり、引っ越しなどで住所が変わったりしたときには、市区町村へ届け出る必要があります。
氏名の変更、または同じ市区町村内で住所変更した場合は14日以内、転居先がそれまでの市区町村と変わる場合は、なるべく早めに転出先の市区町村の福祉担当窓口に届出をし、転入先の福祉担当窓口で新たに受給者証の申請をしましょう。
申請前に利用したい事業所を検討・相談するのもおすすめ
受給者証を申請する前に通いたい事業所を決めていた、という人も少なくありません。多くの事業所では事前相談や見学などを行っています。
事業所を選ぶ際には、以下を参考に、事前にイメージしながら検討しておくとよいでしょう。
事業所の場所:無理なく通えるか、送迎サービスはあるか など
事業所の特徴:特性に配慮されたサポートを受けられるか など
プログラム内容:希望する訓練内容があるか、実習があるか など
就職実績や定着実績
事業所やスタッフの雰囲気
事業所探しの際には、市区町村の障害福祉課などの担当窓口でアドバイスをもらったり、WAM NET(ワムネット、独立行政法人が運営する福祉・保健・医療の情報サイト)などのWebサービスを使ったりして検索する方法もあります。 LITALICO仕事ナビでは、お近くの就労支援事業所を検索し、事業所の様子や提供しているサービス内容を確認したうえで、通いたい事業所に見学や相談の申し込みができるのでぜひご活用ください。
受給者証は、就労支援サービスをはじめとした障害福祉サービスを利用する際に不可欠な認定証です。サービスを希望する際は、まずお住まいの地域の福祉担当窓口に受給者証の申請を行いましょう。
受給者証には利用者が受けるサービスの種類や支給に関する情報が記載されています。紛失したり、住所変更などがあった場合は、再交付の手続きや変更届けの提出が必要です。
もし一人では手続きが難しい場合、お住まいの地域の福祉担当窓口や社会福祉協議会、就労支援サービスを提供する事業者へ相談しましょう。サポートを依頼して、適切な支援が受けられるよう行動していきましょう。