不安障害とは?症状や治療法、薬の種類、仕事と両立するためのアドバイスをお伝えします

2018/03/26
不安障害とは、不安や恐怖が大きくなり、日常生活に支障が出る症状のことです。不安や恐怖の対象により、いくつかの種類に分けられます。この記事では、不安障害の種類と症状、治療法や、仕事をしていく上で利用できるサポートなどについて紹介します。

目次

  1. 不安障害とは
  2. 不安障害の種類、症状は?
  3. 不安障害の治療法
  4. 不安障害と仕事を両立するためには?
  5. 日常生活での不安障害症状のおさえかた
  6. まとめ

不安障害とは

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不安障害とは、不安を主な症状とする精神疾患のことです。特定の対象や状況に対する不安や恐怖が過度に心を占めて精神的に苦しみ、不安や恐怖を感じる状況を避けようとする回避行動により日常生活に支障が出ている状態を指します。

不安障害は、近年では「不安症」と呼ぶことが推奨されています。しかし「不安障害」という言葉も一般的であるため、この記事では「不安障害」という名称をもちいて解説します。
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「不安」と「不安障害」の違い

不安や恐怖は「危険な状況である」と認識したときに生じる感情であり、生体に備わる重要な自己防衛反応です。

しかし、不安や恐怖の度合いが状況に不釣り合いなほど過剰であったり、長期間持続したりして日常生活に支障が出ている場合は注意が必要です。アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、不安障害と診断する際の不安や恐怖の持続期間の目安を「6か月以上」としています。

「自然に感じる不安や恐怖」と「過剰な不安や恐怖」のあいだに明確な境界線はありません。本人が苦痛を感じ、生活に不便を感じる場合は医師の受診を考えた方が良いかもしれません。

不安障害の種類、症状は?

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DSM-5では、不安や恐怖、回避行動を引き起こす対象や状況の種類により、不安障害を以下の9種類に分類しています。

不安障害の種類1:分離不安症/分離不安障害

分離不安障害とは、家や人物などの愛着の対象からの分離を恐怖し不安がり、恐怖や不安の程度が過剰な状態を指します。しばしば小児期に発症しますが、成人でも症状があらわれることがあります。

成人にこの障害があらわれる場合の特徴としては、身内やペットの死など、ストレスのあとで発症するケースが多くみられます。

不安障害の種類2:選択性緘黙症(せんたくせいかんもく症)/場面緘黙症

選択性緘黙(せんたくせいかんもく)とは、他の状況では話すにもかかわらず、話すことが期待される社会的状況において、一貫して話せない状態を指します。発症は通常、5歳前後で発症することが多いですが、話す機会の増える学校へ行き始める時期まで、症状が顕在化しないことが多いです。

緘黙症は、医学的な診断名としては「選択性緘黙症」と名付けられていますが、日本では「場面緘黙症」と呼ばれるのが一般的です。

一般的に成長とともに緘黙の症状が改善するといわれていますが、青年期、成人でもまれに場面緘黙症を発症することがあります。

場面緘黙症の特徴は、話すことを期待されている特定の場面で、話す言語能力があるにも関わらず話せなくなってしまうことです。実際、場面緘黙症のある本人は、話したくても話すことができません。

不安障害の種類3:限局性恐怖症

限局性恐怖症は、特定の対象や状況に対して強烈な不安と恐怖を抱き、回避行動をとる状態です。限局性恐怖症を持つ方では、複数の対象や状況への恐怖がみられることが多く、平均するとおおよそ3つの恐怖刺激に対して強い恐怖を抱くといわれています。恐怖刺激の例は以下の通りです。
  • 動物(例:クモ、虫、犬)
  • 自然環境(例:高所、嵐、水)
  • 血液・注射・負傷(例:注射針、侵襲的な医療行為)
  • 状況(例:航空機、エレベーター、閉所)
  • その他(例:窒息や嘔吐につながる状況、子供では大きな音や着ぐるみ)
親の過保護や、身体的または性的虐待などの環境要因、遺伝的要因などが関係するとされています。動物に襲われるなどの心的外傷的出来事のあとに発症することがありますが、発症のきっかけとなる出来事を思い出せないケースも多くみられます。

不安障害の種類4:社交不安症/社交不安障害

社交不安障害とは、他人の注視を浴びる可能性のある社交場面に対して不安や恐怖を感じ、その状況を回避する状態を指します。動悸や発汗、赤面などの自律神経症状をともなうことがあります。

緊張や不安のため、見知らぬ人や場面に近づかない傾向を示す「行動抑制」という気質や、否定的評価への恐怖を持つ場合もあります。

不安障害の種類5:パニック症/パニック障害

パニック障害とは、繰り返される予期しないパニック発作が起きる障害です。パニック発作は他の精神疾患でもみられますが、パニック障害の特徴は、予期されないパニック発作が反復することです。パニック発作が起きると、激しい恐怖や不快感の高まりが数分以内にピークに達し、動悸や発汗などが伴います。
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不安障害の種類6:広場恐怖症

広場恐怖症とは、次の5つの状況のうち、2つ以上に対し顕著な不安や恐怖があり、それらの状況を回避したり、付き添いの人を必要とする状態です。
  • 公共交通機関の利用(例:自動車、バス、列車、船、航空機)
  • 広い場所にいること(例:駐車場、市場、橋)
  • 囲まれた場所にいること(例:店、劇場、映画館)
  • 列に並ぶまたは群衆の中にいること
  • 家の外に1人でいること

原因

否定的思考や、不安に敏感であるなどの気質と関連があるとされています。また、家族関係などの環境要因のほか、遺伝的要因も指摘されています。

不安障害の種類7:全般不安症/全般性不安障害

全般性不安障害は、さまざまな出来事や活動に対する過剰な不安と心配が6か月以上持続する状態です。他の不安障害では不安や恐怖の対象が限定されますが、全般性不安障害では1つの心配が終わると別の対象に移り変わり、新たな心配が始まります。

原因

行動抑制や否定的思考などの気質が関連すると考えられています。また、小児期の逆境や親の過保護などの環境要因や、遺伝要因も指摘されています。

不安障害の種類8:物質・医薬品誘発性不安症/物質・医薬品誘発性不安障害

物質・医薬品誘発性不安障害とは、パニック発作や不安の症状の原因が、特定の物質や医薬品であると判断される状態を指します。

症状が物質中毒や、医薬品の使用後や離脱(医薬品の減量や断薬)期間中またはその直後にあらわれ、症状による障害が日常生活に支障をきたしている状態です。

原因

パニック発作や不安の症状は、アルコールやカフェイン、幻覚薬などの物質の中毒に関連して起こることがあります。また、アルコールや鎮静薬、睡眠薬や抗不安薬などからの離脱の際に起こることもあります。

不安の症状は、麻酔薬や鎮痛薬、インスリンや甲状腺製剤、経口避妊薬や抗ヒスタミン薬などの薬剤でも誘発されることがあります。

不安障害の種類9:他の医学的疾患による不安症/他の医学的疾患による不安障害

他の医学的疾患による不安障害とは、パニック発作または顕著な不安の症状が、他の医学的疾患の生理学的作用により最もうまく説明される状態を指します。

原因

不安が症状としてあらわれる疾患には、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、肺塞栓症などの心疾患系疾患、脳炎やてんかんなどの神経疾患などがあります。

不安障害の治療法

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治療を受けることができる診療科

不安障害の治療は、精神神経科や心療内科で受けることができます。
精神神経科は、心の病気を扱う診療科です。心療内科は、心の問題が関係して体の症状があらわれていると考えられる疾患を扱います。不安障害は多くの場合、精神的な症状と身体症状の両方があらわれるため、どちらの診療科でも治療対象となります。

不安障害の治療法には、主に薬物療法と精神療法の2種類があります。

不安障害の治療法1:薬物療法

不安障害における薬物療法では、服薬により過剰な不安や恐怖をやわらげます。主に以下の3種類の薬が使われます。

SSRI

抗うつ薬の一種であるSSRIは、不安障害治療で多く使われている薬です。安心や鎮静の情報を神経に伝える脳内物質「セロトニン」の濃度を高めることで、不安や恐怖をおさえます。効果が出るまでに数週間を要するため、中長期的な服用が必要です。

抗不安薬

抗不安薬は脳神経に作用し、不安や恐怖、緊張をおさえる薬です。即効性がある反面、効果は一時的です。長期使用では依存性があらわれるため、一時的に不安を除去する必要がある時のみ使用します。

β遮断薬

β遮断薬は、震えや動悸などの身体症状をおさえる薬です。効果は一時的であり、不安を除去する必要がある時のみ使用します。

不安障害の治療法2:精神療法

精神療法では、医師や臨床心理士と話し合いながら、不安や恐怖、回避行動の原因となっている考え方の傾向を変えていきます。

精神療法1:認知行動療法

認知行動療法では、不安や恐怖につながっている自分の認知(物の考え方や受け取り方)を、事実に沿った客観的なものに変えていきます。また、これまで回避してきた状況に対処する方法を学び、新たな行動パターンを定着させていきます。

精神療法2:森田療法

自らも神経症(森田療法開発当時の「不安障害」の呼称)に苦しんだ精神科医、森田正馬(1874~1938)が、実体験をもとに考案した神経症の精神療法です。不安や恐怖を「より良く生きたい」という欲望の裏返しであるととらえて排除せず、「あるがまま」の自分を認めて生きることを学びます。

不安障害と仕事を両立するためには?

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不安障害の治療を受けながら仕事をしていく場合は、一人で抱え込まず、会社や病院、福祉制度といった社会的資源を利用しましょう。例えば、以下のようなサポートが考えられます。

薬物療法を受けながら働く

会議やプレゼン、会食など、特定の場面で不安が強くなったり、パニック発作が起きたりすることもあるかもしれません。薬の服用に抵抗がある方もいるかもしれませんが、そういったときは、薬を使用することで不安を軽減して乗り切ることも大切です。服用を続けながら、不安を抱えにくい勤務環境を模索していきましょう。

上司や産業医に支援を仰ぐ

不安障害は外からではその辛さが分かりにくいため、上司や同僚など、身近な人に症状を伝えて支援を仰ぐこともひとつの方法です。業務量や勤務時間の調整をすることで、症状が和らぐ可能性もあります。

上司などに伝えることに抵抗がある場合は、産業医や産業カウンセラーなど、社内の専門家に相談してみるのもいいでしょう。

就職や職場定着をサポートする「就労移行支援」

就職活動や仕事を続けることに不安がある方は、働くための知識や能力を身につけることができる就労移行支援サービスを利用することができます。

仕事を続ける上では、体調管理やストレスコントロールなどが重要です。就労移行支援事業所では、そういったセルフマネージメントができるようになるためのサポートもしています。

利用の申し込みは、市区町村の障害福祉窓口で行います。障害者手帳がなくても利用できる場合もありますので、窓口に問い合わせてみてください。LITALICO仕事ナビでは全国の就労移行支援事業所を掲載しており、ご自身にぴったりの事業所を探すことができます。
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経済的支援制度を利用する

不安障害の治療に伴う経済的負担の軽減や、休職した場合の生活費の一定の保障などに関する制度もあります。

自立支援医療制度(精神通院医療制度)

精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。疾患の種類や所得に応じて、ひと月当たりの負担額に上限が設定されます。申請は、市区町村の障害福祉窓口で行います。
参考 : 厚生労働省 「自立支援医療制度の概要」

傷病手当金

疾患や怪我で会社を休んだ際、無収入になってしまう休職中の生活を保障するために支給される手当金です。保険組合の加入期間によって平均収入額の3分の2の額か月額28万円のいずれかが、最長1年6ヶ月まで支給されます。

申請する場合は、まずは勤務先企業の人事担当者に相談しましょう。
病気やケガで会社を休んだとき 
参考 : 全国健康保険協会 「病気やケガで会社を休んだとき」

日常生活での不安障害症状のおさえかた

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不安障害を治すためには適切な治療を受けることが一番ですが、日常生活での工夫を心がけることで、不安の軽減に役立ちます。以下も参考にしてみてください。

生活習慣の改善

生活習慣が乱れて体調が崩れると、不安や恐怖に対する心の抵抗力も低下します。十分な睡眠や栄養バランスの良い食事、適度な運動により基礎体力をつけることなどが、不安や恐怖への抵抗力をつけることにつながります。

リラックスする方法を身につけておく

不安や恐怖が起こった時に、体をリラックスした状態へと導く以下のような方法を身につけておくと安心です。

自律訓練法

自律訓練法とは、自己暗示によって心身のリラックス状態をつくり出す方法です。「楽に呼吸している」「お腹があたたかい」など、安定した体の状態を確認しつつ、その状況を言葉に表して心の中で繰り返します。

腹式呼吸

腹式呼吸とは、お腹をふくらませながら鼻から息を吸い、吐く時にお腹をへこませる、深くゆっくりとした呼吸です。ゆっくりとした呼吸が副交感神経を優位に導き、体をリラックス状態に導きます。

まとめ

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不安障害は不安や恐怖が大きくなり、日常生活に支障が出る疾患です。症状はさまざまですが、適切な治療を受けることで改善が期待できます。また、日常生活における工夫によって症状が緩和されることもあります。
不安障害を正しく知って対処することで、人生の選択肢が広がります。まずは自分にできることから、症状の改善に向けての一歩を踏み出してみてください。
参考 : 日本精神神経学会(監修) 「『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版」参考 : 貝谷久宣、佐々木司、清水栄司/編著 「不安症の事典」
監修 : 増田史
精神科医、医学博士
慶應義塾大学 精神・神経科学教室 特任助教
滋賀医科大学 精神医学講座 客員助手

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