休職とは、労働者が業務を行うことができない、または行うことが適当でない事情が生じたとき、会社がその労働者との労働契約を維持したまま、業務に就くことを免除することです。
休職制度は法律では定められておらず、会社が独自に導入する制度です。休職の対象者は会社と雇用関係にある労働者のため、業務委託や自営業で働く人は対象になりません。休職が適用される条件や期間などは、各会社の就業規定で定められています。
また、似た言葉で「欠勤」や「休業」も休職と混同されやすいですが、これらは明確に異なります。
「欠勤」とは、会社から業務の責任が免除されていない状態で、労働者の自己都合で仕事を休むことです。これは労働契約違反となり、長期にわたり欠勤すると解雇につながる場合があります。
「休業」とは、労働者が会社との労働契約を維持したまま休暇を取得することを指します。会社都合で仕事が休みになるケースや、労働基準法等の法律に従って仕事を休むケースがあります。以下が休業の例です。
天災などによる業務停止による休業(会社都合による休業)
産前産後の休業(労働基準法)
育児休業(育児・介護休業法)
介護休業(育児・介護休業法) など
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休職は、目的や内容によっていくつかの種類に分かれます。ここでは、主な休職の種類につ
業務外の理由による病気やケガの療養目的で、労働者側から申し出る休職です。労働者の私的な理由によって休むため、「私傷病休職」とも呼ばれます。
業務中や通勤中に起こった病気やケガの療養が目的の休職です。「労災による休職」などと呼ばれ、傷病休職とは区別されます。
会社は労働基準法により補償責任を負う必要があり、労災保険給付の請求を行うことで、給付金を受け取ることができます。
出向休職:社員が関連会社やグループ会社に一時的に出向する場合に、元の会社で休職扱いになること
専従休職:雇用関係を維持したまま、労働組合業務に従事するために休むこと
起訴休職:労働者が刑事事件で起訴された場合に、会社がその労働者に休職を命じること
自己啓発休職:労働者が働ける状態にありながら、自分の意思で長期間仕事を休むこと(ボランティア活動への参加や、大学などでの修学、資格取得など)
この記事では、主に業務外の病気やケガによる「傷病休職(以下、休職と記載)」について解説していきます。
休職の期間と休職するまでに必要な手続きについて解説します。
休職を検討する上で、「どのくらいの期間、休職できるのか」「一度決められた休職期間は変更できるのか」と疑問に思うこともあるでしょう。
政府の調査データによると、傷病休職の上限を「6か月超から1年未満まで」と定めている会社の割合が多いのですが、3か月から3年超など会社によって大きく異なります。勤続年数により異なる休職期間を設定している会社もあります。
また、実際に休職に入ってから、休職期間が予定から変更となることもあります。例えば傷病休職の場合、休職に入るときは会社や主治医と相談した上で休職期間を設定しますが、体調や状況によって休職期間延長の相談が可能なケースもあります。期間を延長する場合も主治医と相談の上、会社への申請が必要な場合があります。
いずれにしても休職期間は会社の就業規則によって定められるため、自分が所属する会社の規則を確認しましょう。
休職に必要な手続きは会社によって異なりますので、ここでは一例をご紹介します。
窓口は会社の人事課となるケースが多く、手続きの流れに関する詳細は会社ごとに異なりますので、不明点は問い合わせるようにしましょう。
受診
診断書の受け取り
上司や産業医、人事労務担当者に相談
休職届の提出
手当の申請
手続きの詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。
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休職すると仕事から一時的に離れられるため、心身の回復や治療に専念できます。また、不調の原因に仕事などによるストレスが挙げられる場合には、休職することで好転する可能性もあります。
休職は会社との労働契約を維持したまま休めるため、回復すれば職場復帰も検討できます。そのため、将来の仕事やキャリアに不安があったとしても、治療に専念し回復した後で、今後について落ち着いてゆっくり考えることもできるでしょう。
休職することで収入が減ってしまうなど、不安になることがあるかもしれません。ここでは休職する場合に気になることを解説します。
休職中は収入が少なくなる、またはなくなることも多いため、休職中の生活に不安を感じる場合もあるでしょう。その期間の生活を支えてくれる支援制度(傷病手当金、労働者災害補償保険(労災保険)など)がありますので、ぜひ利用を検討してみてください。それぞれの支援制度については、後ほど詳しくご紹介します。
休職中は仕事の実績がないため、その後の昇進やキャリア形成に不利になるのではないかと不安に思う人もいるでしょう。
社内でのキャリア形成に休職期間がどう影響するかは会社によって異なりますが、それまでの実績などもふまえ、休職期間があったことについて考慮されるケースもあるようです。
また、体調回復後に転職をする場合もあるかもしれません。そうした場合、休職期間があることについて伝えることのメリットやデメリット、伝えないことのメリット、デメリットについて信頼できる人と相談し、どのような選択ができるか検討できるとよいでしょう。
休職を検討する際に最も気になることは、給与などの生活を支える収入源に関することでしょう。休職中の給与は、休職の種類や会社の規定によって異なるため一概には言えませんが、傷病休職のような自己都合による休職は、給与支給がないケースが多いようです。
ただし、健康保険から支払われる給付金(傷病手当金)の対象となる場合もありますので、詳しくは次の章で解説します。
なお、傷病休職以外の休職の場合(専従休職など)、賃金が支払われることも多いようです。会社や各労働組合などの規約を確認し、不明な点は担当窓口に相談しましょう。
休職期間中で給与が減った、もしくはない場合でも、社会保険料は免除されません。社会保険料の支払い金額は、会社の負担分と社員の負担分に分けられます。社員負担分の支払い方法については、会社の規定によって異なるため確認が必要です。
また休職期間中であっても、住民税の支払い義務があります。こちらもどのように支払うかは会社と確認する必要があります。
休職中の給与に関しては、以下の記事も参考にしてみましょう。
休職中には、以下のような手当制度が利用できる場合があります。生活を経済面で支える大切な制度ですので、確認していきましょう。
疾患やケガなどのために会社を休んだとき、傷病休職中の生活を保障する目的で、健康保険から支払われる給付金です。会社に雇用され健康保険に加入している人であれば、正社員だけでなく契約社員や派遣社員、アルバイトも支給対象になります。
もらえる金額や申請方法などは、以下の記事をご確認ください。
労働災害(労災)による疾患やケガの治癒のための休職には、労働者災害補償保険(通称「労災保険」)から給付金が支給されます。業務が原因の場合は休業補償給付、通勤が原因の場合は休業給付と呼ばれます。詳しくは以下の記事をご確認ください。
障害や病気によって生活や仕事に支障が出た場合に支給される年金で、休職している場合にも申請できます。年齢や障害者手帳の有無にかかわらず、障害年金の受給条件にあてはまれば支給されます。
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。働いている場合でも、その症状によって仕事が制限されていると判断されれば支給されます。受給条件や受給金額など、詳しくは以下の記事をご確認ください。
休職中は、ゆっくり体と心を休めて、疾患やケガの治療に努めましょう。十分に休息を取り、体調が回復してくると、休職後の次のステップも見据えていくことになるでしょう。ここでは、その準備期間もふまえた休職中の過ごし方についてご紹介します。
休職中は、仕事から離れゆっくりと休める時期です。復職後のことや休職前の出来事などを考えて、悩みが生じることもあるかもしれませんが、まずは以下を参考に休息や治療に重きを置いて、ご自身のケアを優先できるとよいでしょう。
睡眠など、休息時間をしっかり取る
睡眠・食事・日中活動などの生活リズムを安定させる
自分の状態にあった、適度な運動を行う
リラクゼーションなどのストレス対処に取り組む
趣味や好きな活動に取り組む
ただし、休職した経緯や状況によってケア方法は異なります。自分に合った具体的な方法を知りたい場合は、主治医などに相談してみましょう。
体調が回復し、生活リズムが安定してきたら、休職期間終了後についても検討を始めましょう。
復職に向けた具体的な準備として、「リワーク支援」を活用することもできます。リワーク支援では、職場に近い環境でのオフィスワークや自己分析、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)や自己管理方法など、職場復帰のためのさまざまなリハビリプログラムが用意されています。開始のタイミングや必要なサポートなどは医師と相談しましょう。
休職期間の終わりが近づいてきたら、人事に連絡し具体的な手続きの方法などを確認しましょう。
復職後は元の職場に戻るのか、配置転換を希望できるのか、労働条件に変更はあるかなど、さまざまな気がかりもあると思います。そういった悩みがある場合には、人事へ相談することも必要でしょう。
会社へ何をどのように相談すればよいかなど、復職に関する悩みを一人で相談することが難しいと感じる場合は、リワーク支援などの活用を検討してもよいかもしれません。
復職するには、休職の原因となった疾患やケガが回復し、仕事ができる状態にあることを会社に証明する必要があります。そのために、医師の診断書を提出したり、産業医面談を行ったりします。
十分に回復していないにもかかわらず焦って復職すると、再発の可能性もあります。復職のタイミングは、主治医や会社の産業医、人事労務担当者や上司などとよく相談して決定しましょう。もし予定よりも回復に時間がかかっている場合は、休職期間の延長について相談するとよいでしょう。
主治医の判断や会社とのすり合わせを経て、復職時の勤務時間や業務内容が決まります。時短勤務で復職し、徐々に勤務時間を延ばすケースもあります。
復職後に、業務量の調整や体調面での心配事など具体的な困りごとが出てきたら、一人で抱え込まずに、相談できる上司や人事労務担当者、主治医や会社の産業医・産業保健スタッフなどに相談しましょう。
リワークとは、主に精神面の不調から休職をした人に対して行われる、職場復帰を目指したリハビリプログラムです。以下の施設で行われており、休職から職場復帰への支援を行います。
医療機関
障害者職業センター
就労移行支援事業所
就労継続支援事業所 など
厚生労働省が運営している、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトがあり、そちらでの相談も可能です。働くことに関する、さまざまな相談も可能です。
心身が回復し休職期間が終わっても、「もう一度同じ職場に戻ることが難しいと感じる」「仕事内容や働き方などを変えたい」などの場合には、転職も選択肢に入ってくるかもしれません。
これらは大きな決断であり、また環境や人間関係を新しくすることはそれなりのストレスにもなるため、慎重に判断する必要があります。主治医や産業医、職場の信頼できる人や家族などにも相談しながら検討しましょう。
ハローワークは、職業紹介や就労相談を行う機関で全国500カ所以上に設置されています。利用に年齢制限はなく、すべて無料でサービスを受けることができます。「障害者相談窓口」が設置されており、特性や障害に合った求人紹介を受けられるほか、連携している関係機関に紹介してもらうことも可能です。
ハローワークに関する詳細は、以下の記事をご確認ください。また、お住まいのハローワークは以下より検索することができます。
就労移行支援は、障害者総合支援法にもとづいて定められた、障害福祉サービスのひとつです。各事業所では、一般就労を目指す障害や難病のある人が、働くための知識やスキルを習得することはもちろん、これまでの経験を支援スタッフと一緒に分析したり、さまざまな職場での見学や実習を経験したりしながら、自分に合った業務や職場環境を探すことができます。
就労移行支援についての詳細は、以下の記事をご確認ください。
その他、障害者雇用の求人情報サイトもいくつかあり、それらを活用して転職先を探すこともできます。LITALICO仕事ナビでも障害者雇用の求人情報を紹介していますので、参考にしてみてください。(※求人の状況によって、すべての方にご紹介ができないケースも存在します。)
Iさん 職種:児童相談所一時保護所の児童指導員(正社員)
パニック障害(パニック症)※とうつ病を抱えるIさん。多忙な職場環境により体調を崩し休職。徐々に体調が回復し、職場復帰に不安を抱えながらも復職。一部の上司や同僚には病気について伝えつつ、障害と付き合いながら休職前と同じ職場で働き続けている。
※パニック障害は現在、「パニック症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「パニック障害」といわれることが多くあるため、ここでは「パニック障害(パニック症)」と表記します。
体調を崩し適応障害(適応反応症)※と診断され休職、通院治療中に発達障害の診断も受けたKさん。休職中、リワークプログラムに参加していく中で退職を決意。自分の好きな仕事ができる職場を障害者雇用で見つけ転職したことで、自分の障害も受け入れられるようになった。
※適応障害は現在、「適応反応症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「適応障害」といわれることが多くあるため、ここでは「適応障害(適応反応症)」と表記します。
休職制度は会社によって大きく異なるため、自分の働いている会社の就業規則を確認しておくことが必要です。休職する際には、主治医や産業医、信頼できる上司や人事労務担当者などに相談し、具体的な休職後の流れについて決めておきましょう。
休職することやその後の生活などについて不安に思う場合は、主治医や信頼できる人に相談する、支援制度を利用するなど、一人で抱え込まないようにしましょう。
まずはゆっくり休んで病気やケガの治療に専念し、焦らずに心身の回復に努めることが大切です。