境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)とは?症状や治療法、周囲の接し方、相談先を解説

更新 2024/07/19 公開 2024/07/20
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境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)とは、人に見捨てられるのではないかという不安などが極度に強くなり、対人関係や気分が不安定で日常生活に支障が生じる疾患です。この記事では、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の症状や治療法、周囲の人の接し方や相談先をご紹介します。
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目次

  1. 境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)とは
  2. 境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の症状
  3. 境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の治療法・診断基準
  4. 境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の方への周囲の接し方
  5. 境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)について本人や周りが相談できる場所
  6. まとめ

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)とは


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)(※)とは、対人関係や自己像が不安定で気分や態度がころころと変わったり、人から拒絶されたり見捨てられることに対して過敏になるなどの症状がある疾患で、BPD(Borderline Personality Disorder)とも呼ばれます。

(※)境界性パーソナリティ障害は現在、「ボーダーラインパーソナリティー症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「境界性パーソナリティ障害」といわれることが多くあるため、ここでは「境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)」と表記します。

人から見捨てられることを極度に恐れるあまり、急に相手を傷つける言動などをすることがあります。そうした行動をとった後は自分を責めることがあるなど、本人も苦しい思いをしていることもあります。

また、楽しい気分だったのにもかかわらず突然激しく落ち込んだ気分になるなど、気分も不安定なため、周りから見るといきなり別人に変わったように感じることもあります。

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の症状は、時間の経過とともに緩和されていく傾向があります。


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の原因

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の原因はまだ明確には分かっていません。

遺伝的な要因や、虐待、養育者との離別といった幼少期のストレスの状況などが関係して発症するのではないかと考えられています。


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境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の症状


ここでは、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の症状について説明します。

見捨てられ不安が強い

孤独になりたくないという思いから、「親しい人に見捨てられるかもしれない」という状況を極度に恐れます。

相手に対する期待値が高いため、その反動として、相手が約束に遅刻するなど些細なことから「見捨てられそうだ」と感じ、恐れや怒りを抱いてパニックになったり、相手を激しく責めたりすることがあります。

態度が急に変わる

感情のコントロールが苦手な傾向があるため、感情の起伏が激しかったり、些細なことで癇癪を起こしたりすることがあります。

また、他者に対する見方を急激に変える傾向もあります。出会った当初は相手を理想化し、常に一緒にいようとしたり、あらゆるものを共有しようとしたりすることもあります。しかし、何かのきっかけで相手に失望すると、怒りを抱き、突然攻撃的な言動をとることがあります。

自己像が安定しない

自己像が安定しないというのも症状の一つです。

自分を悪い人間だと考えているときもあれば、周囲の人が自分を気づかってくれないときには、自分が自分でないような気持ちになり空虚感を覚えたりします。

また、自分自身のとらえ方だけでなく、目標や付き合う人、価値観、仕事などを突然変えることもあります。

衝動的な行動をとる

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の人の多くは、行動に衝動性がみられます。

浪費や、安全ではない性行為、薬物乱用など、自分自身を傷つけるような行動をする場合もあります。また、リストカットなどの自傷行為をするケースもあります。

そのほかの症状

そのほかにも、目標が達成されそうになると自ら台無しにするような行動を取ることがあります。怒りがコントロールできず、皮肉や嫌味、批判的な言動を繰り返す場合もあります。

また、非常に強いストレスを感じると、妄想や幻覚が生じることや、現実味が感じられなくなる解離の症状、自分が自分でないような離人感が生じることもあります。これらの症状は、多くの場合、一時的に生じるものと考えられています。


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の治療法・診断基準


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の治療では、おもに心理療法や薬物療法が行われます。

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の治療方法

心理療法

心理療法では、臨床心理士などによるカウンセリングを通してさまざまな治療を行い、症状を緩和することを目指します。治療内容や回数などを医師と相談しながら決めていき、心理士などの専門家と一緒に治療に取り組みます。

たとえば認知行動療法では、物事のとらえ方(認知)や行動パターンの癖を把握し、よりバランスのとれた認知や行動を増やしていくことを目指します。

薬物療法

不安や抑うつ気分、衝動性を軽減するために、気分安定薬や抗うつ薬などによる薬物療法が行われる場合もあります。境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の治療にあたっては、薬物療法のみを行うのではなく、上述の心理療法と併せて治療を進めていくことが効果的とみられています。

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の診断基準

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)は、精神科や心療内科、メンタルクリニックで診断されます。

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)は、パーソナリティの著しい偏りなどにより、周囲の人間関係において不具合が起こったり、自身の生活に支障が生じるパーソナリティ障害(パーソナリティ症)(※)の一つで、成人期早期までに発症します。

(※)パーソナリティ障害は現在、「パーソナリティー症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「パーソナリティ障害」といわれることが多くあるため、ここでは「パーソナリティ障害(パーソナリティー症)」と表記します。

下記のうち5つ以上当てはまる場合に診断されます。

  • 他者から見捨てられることを避けるため過剰な努力する
  • 相手を理想化しているかと思えば同じ相手を激しく批判する不安定な対人関係を築く
  • 自己像がとても不安定な状態
  • 自分に害をなす可能性がある衝動的な行為で、少なくとも2つの領域にわたるもの、例えば、浪費、性行為、薬物などの乱用、無謀な運転、過食などを行う(次で取り上げられている自殺、自傷行為は含めない)
  • 自殺行動(そぶりや脅しも含む)や自傷行為を繰り返す
  • エピソード的に起こる不快感や易刺激性、不安の不安定な表出
  • 慢性化した空虚感
  • 不適切な激しい怒りや怒りの制御が困難である
  • 自分は苦しめられているという疑念を抱いたり自分が自分でないような気持ちを強く抱く

なお、自閉スペクトラム症があり、対人関係に悩みを持つ人、また気分障害があり(特に双極症Ⅱ型)、気分変調が行動に表れやすい人は、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)と誤診されることが多くみられるため注意が必要です。




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境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の方への周囲の接し方


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の人との接し方に悩んでいる場合は、一定の距離感を保ったり、周囲に相談したりすることが大切です。

一定の距離を保つ

親身になり過ぎず一定の距離感をもって接する方が、相手も過度に期待を抱いたり、見捨てられるのではなどという不安を感じづらいといわれています。

また、本人の言動を受け入れようとするあまり、振り回されて疲れ切ってしまうこともあります。すべての要望に応えようとするのではなく、自分の無理のない範囲で距離を保つことも大切です。

感情的にならない

もし相手が感情的になったときは、こちらも感情的になるのではなく、まずは共感を示して落ち着くのを待ったうえで、現実的な困りごとへの対応法を一緒に考えていく方がよいといわれています。

本人もわざと周囲を困らせようとしているのではなく、感情をコントロールできず苦しんでいることもあります。

攻撃的、衝動的な言動に対して、感情的に否定せず一定の態度で接し、冷静に対処していくうちに相手の病気を理解できるようになり、解決の糸口が見つかる可能性があります。

周囲に相談する

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の人への対応が自身の負担になっている場合には、周りの人や専門機関に相談したり、本人に医療機関の受診をうながすようにして、一人で抱え込まないことも大切です。


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)について本人や周りが相談できる場所


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の方や周囲の方が相談できる機関をご紹介します。

保健センター/精神保健福祉センター

どちらも地域の保健衛生に関する公的な専門機関です。
医師や保健師などの専門家が所属しており、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の人や、周囲の人からの相談に対して、アドバイスや医療機関の紹介などを行っています。


電話やインターネットの相談窓口

「こころの健康相談統一ダイヤル」や「いのち支える相談窓口」などの公的な相談機関があります。

こころの問題に関して気軽に相談ができる窓口なので、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の人はもちろん、周囲の人も困りごとについて相談できます。

ほかにも、行政などがSNSやメールなどで気軽に相談できる窓口を用意しているため、調べてみるとよいでしょう。

参考
厚生労働省「全国にある様々な相談窓口」
厚生労働省「相談窓口案内」

当事者会/家族会

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の当事者会や家族会もあります。当事者会や家族会では、同じ境遇の人が集まって交流したり、講演会、勉強会などを行っています。

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)限定ではなく、広く精神疾患の当事者会・家族会もあります。

障害に関する困りごとについて共有などもできるので、お住まいのエリアの近くにこうした当事者会や家族会がないか探してみるといいかもしれません。

カウンセリングルーム

民間のカウンセリングルームでも境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)に対応している場所があります。

本人や周りの方が相談することができるのはもちろん、心理療法を受けることができる場合もあります。こちらもお住まいのエリアの近くにないか探してみるとよいでしょう。


仕事での悩みを相談できる場所

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)の症状によって仕事で困りごとを感じているときに相談できる場所として、以下があります。

  • ハローワーク:疾患・障害のある人向けの「障害者関連窓口」があり、就職に関する相談に応じたり、障害のある人向けの求人紹介などを行っています。
  • 障害者就業・生活支援センター:障害や疾患(精神疾患を含む)のある人が、生活や仕事について相談ができる機関です。
  • 就労移行支援事業所:障害や難病のある人が、企業などと雇用契約を結んで働く「一般就労」を目指すときに利用できる機関です。
  • 地域障害者職業センター:障害のある人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。
  • 働く人の悩みホットライン:日本産業カウンセラー協会が実施する無料電話相談で、仕事や職場の人間関係についての悩みなどが相談できます。
  • 働く人の「こころの耳電話相談」/「こころの耳メール相談」:厚生労働省が実施している、こころの不調について労働者などから電話相談ができる窓口です。メールによる相談も可能です。





参考
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会「働く人の悩みホットライン」
厚生労働省「働く人の『こころの耳電話相談』」
厚生労働省「働く人の『こころの耳メール相談』」

まとめ


境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティー症)は、本人が症状によって困りごとがあるのはもちろんのこと、周囲の人も接し方について困りごとを抱えている場合が多くあります。

日常生活や仕事をする中で困りごとがある場合には、一人で抱え込まず周囲に相談することも大切です。その際には、本記事でご紹介した相談できる場所も活用してみてください。
監修者の写真
監修 : 矢花 芙美子
花クリニック院長・医学博士(精神科医・精神保健指定医)・元九州保健福祉大学教授
東京都渋谷区代々木で1979年より開業(0歳から年齢制限なし)。発達の課題や心理的な面での困難さを持つ子ども、養育に困難や社会生活に困難を持つ大人、生きにくさを持つ方々に対する治療や相談を行っている。内科、小児科も併設
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執筆 : LITALICO仕事ナビ
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