ASDとADDの凸凹結婚生活、正反対だから面白い!?わが家の場合
更新 2024/11/13
公開 2024/12/02
更新 2024/11/13
公開 2024/12/02
実は私、去年結婚しました。自分は人づき合いも好きじゃないし人と一緒に生活するのもストレスを感じるので、一生結婚しないんだろうなと思ってきました。ところが、そんな私でも心が楽になれる相手が見つかり、結婚に至ったのです。今回は、「自分ルール」がはっきりし過ぎているASD(自閉スペクトラム症)の私と、細かいことは気にしないADD(注意欠如障害)の妻との結婚生活についてご紹介します。
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そもそも私が発達障害の診断を受けようと思ったのは、数年前に当時まだ交際中だった妻がADD(注意欠如障害)の診断を受けたことがきっかけでした。
※ADD(注意欠陥障害)は、過去に使用されていた診断名で現在の診断基準では、ADHD(注意欠如多動症)という診断名になっています。この記事では当時の診断名のADD(注意欠陥障害)を表記します。
妻は以前から、どれだけ準備しても忘れ物やうっかりが多かったり、ギリギリになるまでなかなか着手できなかったりで、私から見ても「努力ではどうにもならないさまざまな困難があるんだな」と感じていました。
そのため、妻からADDという診断を受けたと聞いたときも、驚きはなく、「しんどいところがあったら、自分が代わりにやるなり、やり方を工夫する相談に乗ったりするから言ってねー」と伝えたくらいでした。
その後、私もADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)という診断を受けました。妻にそれを話したところ、冷静に「やっぱりそうなんだ。感覚過敏とかあったりするの?」という話になりました。
付き合いが長かったこともありますが、日々、いろいろなことを話し合っていた私たちにとって、「診断」は関係を揺るがすようなものにはなりませんでした。実際、結婚するにあたって、改めて話し合うことも特にありませんでした。
ただ、診断を受けたことは、お互いのことをより考えるきっかけにはなりました。私がほかの人も同じように感じているのだろうと思っていたことは、特性ゆえに感じていた困難だったことが分かったり、お互いが得意なことと苦手なことを知ったりすることができたのです。
そんなこんなで結婚した私たち夫婦の日常生活を人に話すと、笑ってもらったり驚かれることがよくあります。
ASD要素が強い私とADDの妻という私たちが日常生活でどんな生活をしているのかちょっとご紹介しようと思います。肩の力を抜いて読んでいただければ幸いです。
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私は家の中を裸足で歩いていて、足の裏に砂粒や何かがつくと、とても気になってしまいます。そのくせ家の中では絶対に靴下をはきたくないので、裸足で過ごすことはやめられません。
足の裏に何かくっついたときには、違和感があったほうの足が床につかないように、片足で跳ねながらゴミ箱のある場所まで移動してゴミをはらいます。家の中をケンケンして移動する私を見ると妻は笑いを堪えられない様子で「何やってるの?」と聞いてきます。
私は足の裏の違和感を説明しながら、せっせと通って来たところを掃除をするのがいつもの流れです。妻は私と違い、そんなことはまったく気にしないタイプ。ケンケンしているところを目撃されるたびに、笑われています。
ほんとにちょっとしたことなのですが、自分はほかの人とここまで感じ方が違うものなのかと思い知らされました。
「次々と物を捨ててしまう私」と「物をとっておきたい妻」
ある年末に、実家に帰省する準備をしていたときのことです。妻が困った様子で家の中をうろうろしていました。どうしたのか聞くと、「外泊用にとっておいた化粧品の試供品が全然見つからない!」と慌てていました。
私にはその試供品に心当たりがありました。というより、私がそれを捨てた張本人でした。何か月も使われずにそのままだったので、使う予定がないと思ってしまったのです。悪気はなかったのですが、「あれは先月捨てたよ」と話すと、ちょっと気まずい雰囲気に……。
物が多いということは、私にとってはそれだけで情報が増えて疲れてきてしまいます。そのため、必要なもの以外はこまめに捨てています。以前からの習慣だったので、つい妻のものも「使われていないものは不要なもの」と思って捨ててしまったのでした。まさか、妻にとっては必要なものだったとは。
「言わなくても分かるだろう」という思いがお互いのどこかにあったのか、結果、うまくかみ合いませんでした。
それからは私も反省し、家の中を整理するときは、必ず妻に確認するようにして、むやみに物を捨ててしまわないよう気をつけています。お互いが困らないためのちょっとした意識づけです。
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私は視覚・聴覚の過敏があるせいか、かなりのインドア派です。なので休日も、必要がなければずっと家の中にいます。一方妻は、外で活動するのが好きなタイプなので、ことあるごとに「外出しよう」と誘ってくれます。
日によっては外に出たくないので断ることもあるのですが、妻が誘ってくれたからこそ、私ひとりでは行くことはなかったであろうイベントや興味深いお店を知ることができました。
特に、定期的に大きい展示場で開催されるアクセサリーやハンドメイドの即売会などは、初めて行ったときの衝撃が忘れられません。精巧につくられたアクセサリーや完全に自分の趣味でつくったと思われるマニアックな作品など、とてもディープな世界が広がっていて、興味深い体験になりました。
正直、誘われたときには、あまり乗り気ではありませんでした。どんなに楽しくても、しんどさはあります。会場は人も物も多いし、いろいろなところから音がするしで、いるだけでものすごく疲れてしまいます。
でも、こうして引っ張り出してくれたことで、自分の世界を広げてもらえたのには感謝しています。
一人ひとり違う人間、本来それは当たり前のこと。違うから、補い合える
こんな風に、まったくタイプが違う私たち夫婦ですが、だからこそ一緒にいてとても楽しいと感じます。この間は、カーテンの柄を選ぶときに、妻が気に入ったものでも「柄が細かいからチラチラしてやだ」などと言って、悩ませてしまいましたが……。
素直に自分のことを言葉で伝え合い、お互いに助け合って生活することができています。
結婚しない人生を選んでいたとしても、私ひとりでは生きづらさを取り除くことは難しかったかもしれません。妻も妻で苦手なことがあります。そんなふたりでも、協力していけば、お互いの生きづらさをうまくフォローして、もっと生きやすくなると結婚後の生活から感じています。
夫婦でお互いの好みや苦手、癖などの特性を認め合うことは、家族として一緒に暮らしていくうえで重要なことです。凸庵さんの場合には、診断があるということで違いとして互いに認めやすくなり、平和的な解決方法や互いにないものを補い合うような素晴らしい関係になっていったのではないでしょうか。違いを認めることは、自分も相手も尊重する関係につながっていくだけでなく、新たな価値の発見にも発展していけるのだと思います。
※このコラムは発達ナビに以前掲載していたコラムを再構成し、新たに仕事ナビで掲載したものです
監修 : 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授(応用行動分析学)
公認心理師/臨床心理士/自閉症スペクトラム支援士(EXPERT)
LITALICO研究所 客員研究員