障害のある人の働き方には、いろいろな種類があります。ここでは4つの働き方について、紹介します。
求人サイトなどから検索して表示される働き方には、一般就労の「一般雇用」が多くを占めます。一般雇用とは、障害者手帳の有無を問わず、応募条件を満たせば誰でも応募ができる世の中の一般的な雇用のことです。一般雇用の場合、障害があることを開示して、周囲の人の理解や配慮を得ようという人(オープン就労)もいれば、診断や症状は開示せず働いている人(クローズ就労)もいます。
一般雇用以外にも、「障害者雇用」で働くという選択肢もあります。
障害者雇用とは、障害のある人が一人ひとりの特性に合わせた働き方ができるよう、企業などが障害のある人を雇用することです。障害者雇用はオープン就労であるため、求人への応募時から、症状に合わせて働き続けるためのサポートや調整(合理的配慮)が受けやすくなります。合理的配慮については、後ほど詳しく解説します。
なお、障害者雇用で働く場合には、原則として障害者手帳が必要になります。 特例子会社とは、障害のある人の雇用促進のために、親会社が「子会社」として設立した会社のことです。障害のある人にとって、制度や環境、サポート体制などで配慮された職場環境が整っていることがほとんどです。また、親会社が大企業であることも多く、雇用が安定している傾向もあります。ほかにも、障害のある人同士で協力して働く場面もあり、人間関係が築きやすいというメリットもあります。
ただし、特例子会社は全国で614社(令和6年6月時点)とまだ数が少なく、働きたいと思っても通える人ばかりではないというのが現状です。
民間企業などでの一般就労が難しい場合、「福祉的就労」で働くという選択肢もあります。福祉的就労には、雇用関係を結んで働く就労継続支援A型と、雇用関係を結ばずに生産活動を通して工賃を受け取りながら働く就労継続支援B型があります。
これらを利用するためには、障害福祉サービス受給者証が必要です。障害者手帳を持っていなくても、所定の利用条件を満たせば働くことができます。A型とB型では利用条件が異なるため、詳しくは以下の記事をご確認ください。 無料会員になりませんか?
障害者雇用の求人案内が届きます!
前述の通り、障害のある人の働き方は多様です。よって、障害のある人が仕事探しをするときや応募選考時に、障害があることを必ずオープンにする必要はありません。一人ひとり考え方や状況が異なるため、オープンにするかどうかは人によりさまざまです。
ここでは、オープンにして仕事探しをしたり働いたりしようか迷っている人へ、そのメリットとデメリットを紹介します。求職活動の参考にしてみてください。
障害があることをオープンにするメリットとして、業務内容や職場環境の調整などに対して「配慮が受けやすくなる」ことは大きなメリットです。配慮を受けたい場合は、応募選考時から伝えることができ、実際に就業が決まってからもその配慮内容は考慮される場合がほとんどです。
症状による困りごとや、特性による得手不得手が考慮された業務に就くことで、その人の能力が十分に発揮でき、自分らしく働くことができるでしょう。体調不良や治療のための通院などで仕事を休む必要がある場合にも、理解が得られやすくなります。
障害者手帳を取得している人がオープン就労を検討する場合、障害者雇用で就職するという選択肢も増えます。障害者雇用の求人は、短時間勤務の仕事や特性に配慮した仕事も多くあるので、自分に合った仕事を探しやすくなる可能性があります。
オープン就労の場合、入社時から障害や特性について理解があるうえで働くため、困りごとがあっても相談しやすい環境にある場合がほとんどです。困ったときの相談窓口も、職場の上司を始め、人事や産業医などの産業保健スタッフ、後ほど紹介する支援機関の支援者など多くあります。また、周りの人も障害について知っているため、安心して職場で働ける可能性もあります。
一般雇用のオープン就労や障害者雇用の求人数は、障害のあるなしにかかわらず応募できる世の中の一般的な求人と比較すると、比較的少ない傾向にあります。
なお、障害者雇用促進法に基づく法定雇用率の引き上げなどによって、雇用状況は年々改善しているという調査もあります。今後も、オープン就労の求人数が増える可能性もあるでしょう。
一人ひとり就労時間や契約内容によって金額は異なりますが、世の中の一般的な求人より給与が低い傾向があります。これは、雇用形態による違い(正社員・非正社員など)や、クローズ就労よりも労働時間が短いケースが多いためです。
障害者雇用の給料については、以下の記事で詳しく解説しています。給料アップの方法や、利用できる支援制度についても紹介しているので、参考にしましょう。
なお、障害のあることをオープンにしたからといって必ずしも障害者雇用で就労する必要はありません。紹介したように働き方は多様であるため、自分の考えや状況などから、今の自分に合った働き方を検討しましょう。記事の後半で、仕事探しに利用できる支援サービスを紹介しています。働き方に迷うときは、これらの専門機関のアドバイスを聞いてみてもよいかもしれません。
求人の探し方には、さまざまな方法があります。自分の希望する業界や職種、働き方を思い浮かべつつ、求人を探したり窓口で相談したりしましょう。
ハローワークは、働きたい人であれば誰でも無料で利用できる職業紹介所です。障害のある人専門の窓口も設置されており、障害者手帳がなくても相談ができます。障害についての知識を持つ専門スタッフがいて、就職に関する相談受付や、仕事の情報提供、求人の紹介などを行っています。
障害がある人に特化した人材紹介会社もあります。一般的な流れとして、まずは求職者の登録を行います。その後専任アドバイザーがつき、就職活動の準備や相談、自分にマッチする求人の紹介などをしてくれます。
サービス会社によっては、ハローワークや就職情報サイトで公開していない求人を紹介してくれる場合もあります。求人票だけでは分からない、具体的な職場の雰囲気や職場環境などの情報も分かるでしょう。基本的に無料で利用できます。
求人情報は、就職サイト(転職サイト)にも多く掲載されています。1求人に対する情報量が多く、やりがいや社風、求める人材像、社内の様子が分かる写真などが掲載されており、就労イメージがしやすいというメリットがあります。こちらも、基本的に無料で利用できます。
就職フェア・合同面接会は、民間会社やハローワーク、行政などが主催するイベントです。障害のある人を採用したい企業が、イベントホールなどに集まり企業ブースを出します。求職者は会場内にある各企業のブースを訪問して、その場で求人に関する質問や相談などができます。
気になる会社の社員から生の声を聞け、その場で複数の会社へ相談ができるなど、たくさんの企業と出会える機会です。
就労継続支援A型・B型は、一般就労(一般雇用のオープン就労、障害者雇用)と探し方が違う部分があります。就労継続支援A型・B型の求人は、自治体の障害福祉窓口やハローワークなどで紹介してもらえるほか、インターネットで調べることもできます。
応募前に見学や体験ができるところもありますので、気になる事業所があれば事前に問い合わせしてみましょう。就労継続支援A型事業所・就労継続支援B型事業所は、LITALICO仕事ナビからも検索できます。
無料会員になりませんか?
就労支援施設の案内が届きます!
自分にあった仕事を探すには、何から始めればよいのでしょうか。まずは、次に紹介する2つから進めてみましょう。
一般的な就職活動の自己分析に加えて、以下を参考に、自分の能力を発揮するために必要な情報を整理しましょう。また、症状によって自分だけでは対処が難しい困りごとが起こる可能性があり、職場に配慮をお願いしたいことがあれば、それも明確にしておきます。
障害特性による得手不得手
症状が現れにくい職場環境や雰囲気
無理のない就業時間 など
自己分析をしたうえで求人を探すと、「自分の能力を活かせそう」「長く続けられそう」など、求人を探すうえでのポイントが分かるようになるでしょう。さらに、履歴書や面接の準備として役立ちます。
やりたい仕事が見つかり、応募したい企業が見つかったあとは、その企業の研究をしましょう。どのような業務を行っているのか、職場環境や雰囲気は自分に合いそうか、どんな人材を求めているのかなどを調べます。
企業研究は、求人票の内容や企業の公式サイト、店舗、製品、雑誌や新聞の掲載記事などを確認しましょう。
求人を探すとき、雇用形態や給与、勤務地などに注目しがちですが、自分に合った仕事を探すためには、以下のようなポイントにも注目しましょう。
就業にブランクがあったり、症状によって体調が不安定になることがあったりする場合、出社してフルタイムで働くと疲れてしまい、長く働くことが難しいケースもあるでしょう。時短勤務やフレックスタイム制、在宅勤務など、柔軟な働き方ができるかどうかもチェックしてみましょう。
障害のある人の離職理由として、労働条件が合わないことが多く挙げられます。入社時はアルバイトやパートなどで就職し、長く働くうちによりよい条件での勤務を考えることがあるかもしれません。自身のキャリアプランを考えるうえで、正社員で働くことを考えているのであれば、正社員登用制度があるかどうかも確認するとよいでしょう。
就職活動の段階になったら、以下のようなポイントに注目しましょう。
配慮を相談したいと考えている場合は、応募したい企業で過去に障害のある人が働いたことがあるかどうか、面接などで聞いてみましょう。
前述の通り、働き方によって必要に応じた「合理的配慮」を相談します。「合理的配慮」とは、障害のある人とない人とが均等な待遇を確保して、一人ひとりがそれぞれの能力を発揮してより働きやすくなるように、個別の対応や支援を行うことをいいます。雇用分野における合理的配慮(自社で雇用している、障害のある人への合理的配慮)は、障害者雇用促進法において義務付けられています。
雇用経験がない企業の場合、自身の特性や必要な配慮を企業に伝えることがより重要になるかもしれません。合理的配慮を伝える準備を一人で行うことが難しい場合は、後ほど紹介する支援サービスを活用することをおすすめします。
一般雇用のオープン就労や障害者雇用で働く際、合理的配慮を受けたい場合は応募選考時に伝える必要があります。伝えておくことで、その後の入社時に職場との話し合いがスムーズになります。配慮は、希望するものをすべて受けられるわけではありません。職場とのすり合わせをしながら、対応できる配慮内容を調整していきます。
では実際の職場では、どのような合理的配慮があるのでしょうか。以下に、その例を紹介します。
合理的配慮はどこに相談するのでしょうか。相談先はいくつかあり、職場の上司、人事や産業医などの産業保健スタッフ、主治医、後ほど紹介する支援機関の支援者などです。以下に相談の例を挙げるので、相談先は一つではないことを知っておきましょう。
職場にどのような配慮を希望するのか事前に相談する
話し合いの場に支援者にも同席してもらい、客観的・専門的な立場から助言をもらう
上司から職場の同僚に対して説明をしてもらう
定期的な面談を設定してもらう
上司や同僚にどのように相談するとよいかを相談する
上司や同僚に対して合理的配慮の概念について説明してもらう
上司では判断の難しい会社のルールなどに関する相談をする(時短勤務、時間休の取得など)
産業医などとの連携・相談について調整してもらう
主治医から産業医などを通じ、人事や上司に医学的見地から必要な合理的配慮を伝えてもらう
障害者トライアル雇用は、障害のある人が一定期間実際の職場で働き、職場との相互理解を深めたうえで就職するかどうかを判断する制度です。働く期間は3〜6か月です。正式に働く前にトライアルができ、仕事内容や職場環境を知ることができるというメリットがあります。
この制度を利用する場合は、ハローワークなどが窓口となっています。基本的に診断と障害者手帳がある場合に利用できる支援ですが、場合によっては障害者手帳がなくても利用できることがあります。
仕事探しに自信がない、どうやって探せばいいか分からない、という場合は支援機関を利用してみましょう。
一般就労を目指す障害や疾患のある人が、就労移行支援事業所に通いながら就職活動のサポートを受けることができる障害福祉サービスです。体調の安定と仕事の両立や、必要な配慮についての助言など、一人ひとりに合った就労サポートを行っています。
障害や疾患のある人へ、就労と日常生活の両方の支援を行う機関です。職業訓練や、企業での職場実習のあっせんなどといった就職活動のサポートや、健康管理や生活設計などに関する助言を行っています。企業での職場実習では、実際に業務を経験することで、自分とその職種との相性を確かめることができます。
障害のある人に専門的な職業リハビリテーションサービスを行い、地域や企業とも連携して、障害の特性に合った就職の提案が受けられる機関です。全国の各都道府県に最低1か所ずつ設置されています。
ハローワークには、一般の相談窓口のほかに、障害のある人のための「障害者関連窓口」があります。自分の特性や障害に合った求人紹介を受けられるほか、相談内容に合わせて連携している支援機関を紹介してもらうことも可能です。
精神・発達障害者雇用サポーターは、一部のハローワークに配置されています。精神障害や発達障害のある人の就職相談、関係機関の紹介、職場実習や職業紹介など幅広いサポートを行っている専門的な支援員です。
すべてのハローワークに配属されているわけではないため、支援を検討する場合は事前にお近くのハローワークへ確認しておくと安心です。
支援サービスを利用するにあたって、できるだけ対面ではない方法で相談したいという人もいらっしゃるでしょう。その場合、以下の厚生労働省が運営しているWebサイトを活用してみてください。電話やSNS、メールなどさまざまな方法で相談できるので、気軽に利用してみてください。
突然会社に行けなくなり適応障害(適応反応症)※を診断されたAさん。のちに発達障害によるものだと分かり、退職して障害者雇用の求人も探してみることにしました。その求人の中で大学時代から入りたかった会社を見つけ、メールでのコミュニケーションを主に仕事を進められることが自分の特性に合っていると感じたAさんは、現在その会社でエンジニアとして活躍しています。
※適応障害は現在、「適応反応症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「適応障害」といわれることが多くあるため、ここでは「適応障害(適応反応症)」と表記します。
接客の仕事でミスを繰り返し自信を喪失、退職したBさんは、発達障害ではないかと考え発達障害者支援センターで検査を受け、ADHD(注意欠如多動症)の診断を受けます。自分の職業適性を考えるため就労移行支援に通い始めたBさんは、自分が好きなゲーム業界で特例子会社の求人を見つけました。現在は製品開発の土台部分となる業務に携わり、日々やりがいを感じています。
人間関係に悩み転職を繰り返していたCさん。発達障害に気付いてからも職場にうまく伝えることができず、配慮を得られず悩んでいました。その後障害者雇用で介護業界に転職し、現在は障害者雇用の面接補助や定着支援に携わっています。障害があるからこそできる支援を大切に、自分の経験を活かしながら働いています。
そのほかのLITALICO仕事ナビ「就職・転職ストーリー」は、以下で読むことができます。
長く働いていくためには、働き方の種類や仕事探しのポイントを知り、あせることなく探すことが大切です。場合によっては、合理的配慮の相談を行い、支援サービスもうまく活用しながら進めましょう。
就労移行支援の利用を検討している人は一度見学に行ってみましょう。事業所については、LITALICO仕事ナビでも検索することができます。ぜひ活用してみてください。