睡眠障害とは、不眠や過眠など睡眠に関するさまざまな疾患の総称です。睡眠障害の中では不眠症がよく知られており、成人の6~10%が罹患しているというデータもあります。
睡眠障害は単に睡眠に影響が出るというだけではなく、日中の眠気やだるさ、集中困難、さらには抑うつなどの精神的な不調が現れることもあります。
睡眠障害にはさまざまな種類があります。主なものとしては、不眠症、過眠症、睡眠時随伴症があります。
なかなか寝られない、夜中に何度も起きる、朝早く目が覚める、睡眠時間が短いなどの症状によって、仕事など日中の日常生活に影響が出ている状態。
睡眠を妨げるような疾患にかかっておらず、睡眠不足の状態ではないのにもかかわらず、日中に猛烈な眠気が生じることで、仕事などの日常生活に支障が出ている状態。
寝ている間に寝ぼけたり、歯ぎしりや悪夢など望ましくないことが生じる状態。例えば、睡眠時遊行症、夜驚症、悪夢、レム睡眠行動障害などがある。
睡眠障害の種類や症状、治療法などの詳しい情報は、以下の記事を参考にしましょう。
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睡眠に関する困りごとがあり、「朝までしっかり眠りたい」「ぐっすり朝まで眠れるような薬があればよいのに」と思っている人もいらっしゃるかもしれません。
睡眠障害の治療では、まずは睡眠環境を整えることが大切だといわれています。そのうえで必要に応じて睡眠薬や睡眠導入剤といった薬が用いられます。日本では成人の4.8%、つまり約20人に1人が、医師から処方された薬を服用しているともいわれています。そのため、依存性の低い薬や、翌日に影響が少ない薬など、服用する人の要望や体質に合ったさまざまな睡眠薬の開発も進んでいます。
睡眠薬や睡眠導入剤は、医療機関を受診し、主治医の処方を守って正しく使用しましょう。自己判断で服薬の量を調整したり、止めたりすることがないように注意しましょう。
なお、睡眠薬と睡眠導入剤に本質的な違いはなく、「睡眠薬」の中で比較的作用する時間が短いものを「睡眠導入剤」と呼ぶことがあります。
睡眠障害に用いられる薬は数多くあり、その種類もさまざまです。睡眠薬(睡眠導入剤)は、医療機関を受診し医師に必要だと判断された場合に処方されます。
一番多く使われている睡眠障害の薬で、リラックス作用に関わる脳内の神経伝達物質GABAの働きを活性化させ、催眠や鎮静、筋肉を緩める筋弛緩などを促します。
比較的短時間で作用する薬で、寝つけないという入眠困難がある人に処方されます。筋弛緩作用が弱く、ふらつきや転倒などのリスクが少ないのが特徴です。
体内時計のリズムを調整するホルモンと似た作用を持ち、睡眠を促す薬です。作用は緩やかですが、睡眠時間を増やす作用が期待できます。
目覚めを促すホルモンの働きを抑制することで、入眠をスムーズにし、中途覚醒を防ぐ薬です。
睡眠障害の薬の効果は作用時間によって超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型の主に4つに分けられています。それぞれの効果の特徴は以下の通りです。
作用時間が短く、主に入眠障害がある場合などに使われます。服用後のふらつきなどが生じる可能性があります。
超短時間作用型と同様に、入眠障害がある場合などに用いられます。夜中に起きる中途覚醒がある場合にも用いられることがあります。
中途覚醒や、朝早く目が覚める早朝覚醒がある場合などに用いられます。翌日への持ち越し効果が出やすい場合が多くあります。
中途覚醒や早朝覚醒、日中の不安に対しても用いられます。昼間の活動に影響する可能性があります。
ふらつきや転倒などが起こる可能性があるため、基本的には就寝直前に服用します。また、服用したらベッドに入るなど就寝の体勢に入ることが大切です。食事を摂ってからも、ある程度時間を空けましょう。アルコールを飲んだ後に服用すると、ふらつきや物忘れなどの副作用が出やすくなるため注意が必要です。
ほかにも、持病や健康状態、ほかの薬との影響も考えられるため、身体の状態や服用中の薬について医師に伝えたうえで処方してもらうようにしましょう。また、指示された服用方法を守ることも大切です。
睡眠薬には効果だけではなく、副作用もあることを知っておきましょう。
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の副作用
上記で紹介したベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には、筋弛緩作用、持ち越し効果、前向性健忘、退薬症候(依存性)などの副作用があるといわれています。
筋弛緩作用とは、筋肉が緩むことを指します。そのため、ふらつきや転倒などが起きる可能性があります。
持ち越し効果とは、睡眠薬の効果が翌朝以降も残っていることを指します。そのため、眠気が継続する寝ぼけの状態や、倦怠感などが続くことで、仕事や日常生活に影響が出る可能性があります。
前向性健忘とは、睡眠薬の服用前後の記憶があいまいになることを指し、服用後の物忘れなどがあります。こういった副作用が出た際は、すぐに医師に相談するようにしましょう。
急な減薬や投与中止によって、不安が生じたり不眠が生じたりすることを指します。減薬や投与の中止については医師の指示に従い、自己判断をしないようにしましょう。
メラトニン受容体作動薬の睡眠薬は依存性が少ない一方、即効性が少ないとされています。また、副作用として頭痛や傾眠(日中の眠気)、めまいが生じることがあります。
オレキシン受容体拮抗薬の睡眠薬では、傾眠、頭痛といった副作用や、疲労感や倦怠感、悪夢などの副作用の可能性があるといわれています。
また、以下が睡眠障害の薬の種類や効果時間、副作用などについてまとめた表です。新薬やジェネリック医薬品もあるためこの限りではありませんが、参考として活用してみてください。
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睡眠障害の薬の服薬を急にやめると、「離脱症状」という不眠や不安、焦燥感、頭痛、吐き気などさまざまな症状が現れることがあります。さらに、「反跳性不眠」といって服用前よりも強い眠気が出るといった症状など、日常生活に影響が生じる可能性もあります。
離脱症状を軽減させるためには、医師の指示に従って徐々に減薬していくことや、認知行動療法などのほかの治療法と組み合わせて治療を進めていくことが大切です。減薬や断薬をしたいと感じることがあっても、けっして自己判断で減薬したり服用を止めたりせずに、医師と相談しながら進めていきましょう。
睡眠障害の薬には、前述した医師から処方される薬のほかに、薬局やドラッグストアなどで売っている市販薬があります。処方薬は専門家の管理が必要とされるもので、症状などに合わせて種類や量が判断されますが、市販薬は一般の人が自身の判断で使えるように、比較的安全性が高いものが販売されています。
市販薬は、厳密には「睡眠改善薬」と呼ばれ、主に効き目成分(ジフェンヒドラミン塩酸塩)が脳内のヒスタミンの働きをおさえて自然に眠くなるよう作用し、一時的に睡眠を改善するものです。つまり、睡眠改善薬は、旅行や心配ごとなどで一時的に不眠になっている場合の使用を想定されています。睡眠に関して日常生活に困りごとが出ている場合には、医療機関を受診しましょう。
睡眠を改善するための漢方薬もあります。ほかの薬との飲み合わせなどを検討し、医師が積極的に前述した睡眠薬を使えないと判断した場合、漢方薬を処方されることがあります。即効性はないが副作用が少ないもの、依存性が低いものなど、効果や副作用に関する希望があれば主治医と相談してみましょう。
処方される漢方薬の例として、以下のようなものがあります。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
抑肝散(よくかんさん)
加味帰脾湯(かみきひとう) など
睡眠障害の治療は、まずは睡眠環境やストレス環境などを調整し症状の改善を試みます。その補助的な役割として、睡眠薬が処方される場合も多くあります。環境調整や睡眠薬治療のほかには、次に紹介する睡眠衛生指導や認知行動療法もあります。
これらの治療法も含め、睡眠障害の治療を受けたい場合、まずは通える距離にある医療機関に相談しましょう。医師やカウンセラーなどと相談しながら、どのような治療法が適しているか確認し進めていきます。
睡眠衛生指導とは、医師などからの指導によって、睡眠に関する正しい知識を持ち、生活の中で実践していくことです。代表的な指導内容として、以下があります。
定期的な運動:適度な有酸素運動で、睡眠を促します。
寝室環境:室温や音、光などの寝室環境を快適に整えることで、睡眠の質を向上させます。
規則正しい⾷⽣活:空腹で寝ると睡眠を妨げるため、空腹のまま寝ることを避けます。
就寝前の水分:睡眠前に過度な水分摂取をしないことで、夜中に目覚めてトイレに行く頻度を減らせます。
カフェイン・アルコール・タバコの影響:就寝前のカフェインやアルコール摂取、タバコは睡眠の妨げになります。
寝床での考え事など:悩みごとを寝床に持っていくと、寝つきが悪くなり深い睡眠の妨げにもなります。
ほかにも、主に医療機関で行われる認知行動療法があります。認知行動療法では、専門家とのカウンセリングを通して、睡眠障害を長引かせる可能性のある生活パターンや考え方、過覚醒などの身体反応について自己理解を深め改善していきます。
睡眠障害で悩んでいる人は少なくありません。一口に睡眠障害といっても種類や程度には個人差があるため、自分の状態に合った治療法を見つけて、実践していくことが大切です。
自分だけでは解決できないくらい、睡眠に困難があり日常生活に支障が出ている場合には、一度受診し医師に相談しましょう。睡眠障害の治療は睡眠環境を整えることから始まり、必要に応じて処方薬が用いられます。医師と相談し適切な治療を進めていきましょう。