障害支援区分とは、障害のある人などに必要とされる、標準的な支援の度合いを総合的に示すものです。障害者総合支援法が定める障害福祉サービス(短期入所、生活介護など)を利用するときに、この区分が必要になる場合があります。
障害支援区分は自治体によって認定調査が行われ、非該当もしくは区分1から区分6が決定されます。この区分に応じて、利用できる障害福祉サービスの種類やサービス量が決まります。
以前は、「障害程度区分」と呼ばれていましたが、現在は「障害支援区分」へと名称が変わっています。
障害支援区分は、区分1~区分6までの6つに分かれており、数値が大きくなるほど必要な支援の度合いが高くなります。また「非該当」という判定もあります。就労移行支援や就労継続支援、自立訓練(機能訓練・生活訓練)などは、この非該当(もしくは申請なし)でも利用できます。 なお、この区分は障害者総合支援法が定める障害福祉サービスに対して使用されるものです。障害者手帳や障害年金の等級とは異なりますので注意しましょう。障害者手帳や障害年金については、以下の記事で詳しく解説しています。
障害者総合支援法に定められた、障害福祉サービスの対象となる障害の種類は以下の通りです。
身体障害
知的障害(知的発達症)※1
精神障害(発達障害を含む)
一部の難病※2
障害児
この記事では18歳以上の成人向けのサービスについて説明していきます。
※1 現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
無料会員になりませんか?
障害者雇用の求人案内が届きます!
障害支援区分は、市町村などの自治体によって認定が行われます。認定は、主に短期入所や生活介護などの「介護給付」について実施され、就労移行支援や就労継続支援などの「訓練等給付」(共同生活援助の介護を伴う場合を除く)のみを利用する場合は行われません。給付の種類については、後ほど紹介します。
ここでは、申請から認定までの流れと具体的な調査項目について紹介します。
障害福祉サービスを利用する際は、自治体の障害福祉課などで申請します。申請後、利用したいサービスにおいて区分認定が必要であれば、障害支援区分認定調査が行われます。認定までの大まかな流れは以下の通りです。
まず認定調査員が自宅などに訪問し、全80項目のヒアリング(聞き取り調査)を行います。その結果と医師の意見書をもとに、コンピュータによる一次判定を実施します。その後、市町村審査会による二次判定が行われ、障害支援区分が決まります。なお、全80項目のヒアリングは、状況に応じてオンラインで行うこともあります。
区分が決まると、「障害福祉サービス受給者証」(以下、受給者証)が発行され、サービス利用が可能になります。受給者証には、認定された障害支援区分が記載されます。
認定調査員による訪問調査では、以下の80項目についてヒアリングが行われます。
寝返り・起き上がり・座位保持・移乗・立ち上がり・両足での立位保持・片足での立位保持・歩行・移動・衣服の着脱・じょくそう・えん下
身の回りの世話や日常生活に関連する項目(16項目)
食事・口腔清潔・入浴・排尿・排便・健康/栄養管理・薬の管理・金銭の管理・電話等の利用・日常の意思決定・危機の認識・調理・掃除・洗濯・買い物・交通手段の利用
視力・聴力・コミュニケーション・説明の理解・読み書き・感覚過敏/感覚鈍麻
被害的/拒否的・作話・感情が不安定・昼夜逆転・暴言暴行・同じ話をする・大声/奇声を出す・支援の拒否・徘徊・落ち着きがない・外出して戻れない・1人で出たがる・収集癖・物や衣類を壊す・不潔行為・異食行動・ひどい物忘れ・こだわり・多動/行動停止・不安定な行動・自らを傷つける行為・他人を傷つける行為・不適切な行為・突発的な行動・過食/反すう等・そう鬱状態・反復的行動・対人面の不安緊張・意欲が乏しい・話がまとまらない・集中力が続かない・自己の過大評価・集団への不適応・多飲水/過飲水
点滴の管理・中心静脈栄養・透析・ストーマの処置・酸素療法・レスピレーター・気管切開の処置・疼痛の看護・経管栄養・モニター測定・じょくそうの処置・カテーテル
障害支援区分の有効期限は、原則として3年です。その人の状態や環境などによって、有効期限が変わることもあります。また、自治体によって異なることもあり、例えば神奈川県横浜市では6か月~3年、東京都中野区では1年~3年などと定められています。気になる人は、お住まいの自治体に確認するとよいでしょう。
有効期限の終了後もサービスを利用したい場合は、更新手続きが必要です。自治体によっては、期限前にお知らせが届く場合もあります。念のため、受給者証に記載された「認定有効期間」の欄を確認しておきましょう。
なお、期限内であっても障害の状態が変化した場合は、変更申請手続きをする必要があります。例えば、加齢によって支援の必要性が高く大きくなった場合や、精神障害の症状に改善傾向があり支援の必要性が低くなった場合などです。
障害支援区分の認定結果や、障害福祉サービスの支給決定の内容に不服がある場合は、「障害者介護給付費等不服審査会」に不服申し立て(審査請求)をすることができます。
申し立ては、都道府県に対して行いますが、まずは障害支援区分の申請をした自治体窓口に相談してみるとよいでしょう。
障害支援区分が決まることで利用できる障害福祉サービス
障害福祉サービスには、さまざまな種類があります。大きく分けて、障害支援区分が必要な「介護給付」と、障害支援区分が不要な「訓練等給付」(共同生活援助の介護を伴う場合を除く)があります。

障害支援区分が決まることで利用できる障害福祉サービス
介護給付は、食事や入浴、外出時の支援などの介護支援を提供するサービスです。障害支援区分によって利用できるサービスや量が異なるため、利用前に障害支援区分の認定を受ける必要があります。
訪問系:居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・重度障害者等包括支援
日中活動系:短期入所・療養介護・生活介護
施設系:施設入所支援
訓練等給付は、自立した日常生活や社会生活を送れるように、生活や就労(仕事)に関する訓練を提供するサービスです。訓練等給付の利用には、基本的に障害支援区分の認定は不要ですが、共同生活援助の介護を伴う場合のみ、障害支援区分の認定が必要です。
居住支援系:自立生活援助・共同生活援助
訓練系・就労系:自立訓練(機能訓練)・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労定着支援
以下に、障害福祉サービスを利用するために必要な区分をまとめました。表にない障害福祉サービス(自立生活援助、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援)は、障害支援区分の認定は必要ありません。
利用要件などがありこの限りではないため、詳細は自治体の障害福祉課などで確認しましょう。
無料会員になりませんか?
就労支援施設の案内が届きます!
障害福祉サービス以外にも、障害のある人が利用できる支援があります。ここでは生活の助けとなる支援について紹介します。
自立支援医療制度とは、心身の障害の治療に対する医療費の自己負担を軽減する公的な制度です。自立支援医療には3種類あり、精神疾患(発達障害を含む)のある人の通院治療を対象とする精神通院医療、18歳以上の身体障害のある人を対象とする厚生医療、18歳未満で身体障害のある人を対象とする育成医療があります。
障害者手帳は、一定の障害の状態にあることを証明する公的な手帳です。「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があり、取得すると生活上のさまざまな支援を受けることができます。
障害者手帳を取得すると、税金の控除や公共料金・施設利用料・交通運賃の割引などを受けることができます。さらに、自治体によっては独自のサービスがあるところもあります。また、就労においては障害者雇用への応募も選択肢の一つになります。
以下の記事では、障害者手帳を取得するメリットなどについて解説しています。取得を検討している場合は、参考になるかもしれません。
障害年金は、障害や難病などによって生活や仕事に支障がある人に支給される年金です。受給要件を満たしていれば年齢に関係なく受給できます。障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、加入している年金制度の種類によってどちらに該当するか決まります。
補装具費支給制度は、補装具の購入や修理などにかかる費用の助成が受けられる制度です。補装具とは、義肢や補聴器、車いすなど、障害のある人が身体機能を補完・代替するための用具のことです。
補装具費の利用者負担は原則1割で、世帯の所得に応じて月額の上限が定められています。詳しくは、自治体の障害福祉課などに問い合わせてみましょう。
相談支援は、障害のある人やその家族からの相談に対して、適切な障害福祉サービスを紹介したりサービス利用に際しての計画を作成したりする機関です。利用したい場合は、お住まい地域の相談支援事業所や、自治体の障害福祉課などに連絡しましょう。
生活保護は、貯蓄などの資産や年金、就労で得られる収入などを合わせてもなお経済的に困窮している場合に、住まい、生活、医療などの費用を助成することで最低限の生活を保障する制度です。世帯の資産や生活状況などに基づいて受給が判断されます。
生活の支援だけでなく、仕事や就職に関して利用できる支援もあります。
ハローワークには障害のある人専用の窓口が設置されており、障害者手帳の有無に関係なく利用できます。障害に関する知識のあるスタッフが、就職相談、求人の紹介、セミナー案内、就職活動のサポート、就職後の定着支援などを行います。
地域障害者職業センターは、障害のある人それぞれのニーズに合わせて、地域や企業などと連携して専門的な職業リハビリテーションを提供しています。事業所にジョブコーチを派遣し、定着に向けた専門的なアドバイスなども行います。
障害者就業・生活支援センターは、障害のある人を対象に、生活や仕事の両面から相談や支援を提供している支援機関です。生活面では金銭管理や健康管理、住宅に関する相談など幅広い分野で相談を受付けています。仕事面では就職の相談から職場実習のあっせん、就職後のサポートなども行っています。
就労移行支援は、前述した障害福祉サービスの「訓練給付」のひとつです。障害や難病のある人が一般就労を目指す際に利用できます。その人に合わせた個別支援計画を作成し、通所しながら健康管理やコミュニケーションスキル、業務スキル、就職活動の支援などを受けることができます。面談を通して就職後の定着支援も行っています。
就労移行支援事業所は、LITALICO仕事ナビからも検索できます。興味のある事業所が見つかったら、プログラムの内容を確認し、事前相談や見学、体験利用などが可能なのか調べてみましょう。
障害支援区分は、障害福祉サービスの介護給付を利用する際に決められるもので、必要な支援の度合いによって非該当もしくは区分1から区分6の区分に分けられます。
区分認定を受けたい場合は、自治体の窓口へ申請しましょう。その後、認定調査員のヒアリングや医師の意見書、市町村審査会などによって決定がなされます。有効期限は原則3年間で、利用しているサービスを継続したい場合には更新手続きが必要です。
障害福祉サービス以外にも、生活や就労のサポートを受けられる支援機関は多くありますので、分からないことは自治体の障害福祉課などへ相談しましょう。