障害を開示して就職!30歳で適応障害、ADHD診断の私の働き方をレポート
更新 2025/04/23
公開 2025/04/24
更新 2025/04/23
公開 2025/04/24
こんにちは! 群馬でイラストレーターをしているざわとみと申します。田舎でのんびりリクガメと暮らしています。30歳の時に適応障害(適応反応症)になり、それをきっかけに検査をしてADHD(注意欠如多動症)の診断を受けました。今回は、障害や病気について開示して就職活動や就労をする「オープン就労」について、私が経験したこと、感じたことをお伝えしたいと思います。
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私は30歳の時の仕事での適応障害(適応反応症)をきっかけに、ADHD(注意欠如多動症)と診断されました。「自分が発達障害であることを踏まえ、これまでと違う働き方をしたほうがいいかも……」と思い、いろいろな書籍やインターネットで、当事者の方たちはどう働いているのだろう?と調べてみました。
その時に、「オープン就労」と「クローズ就労」という考え方があることを知りました。それぞれメリット・デメリットがありますが、自分の性格上、いろんなことをすぐ話してしまうタイプだし、あえて隠しごとをしながら働く感じもなんだかモヤモヤするので、次に就職する時はオープン就労にしようと決めました。私にはクローズ就労で障害のことを「こっそり胸の中にしまっておく」という選択はありませんでした。
どちらの働き方が良い、悪いとは一概に決められません。発達障害であろうとなかろうと、いろんな人の話を聞くと、やっぱり人の数だけいろんな職業や働き方があるからです。
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私は後先考えずにオープン就労を選択しましたが、もし自分がクローズ就労で働いていた場合のメリット・デメリットも考えてみました。
メリットは、仕事に支障が出そうな特性をあらかじめ知られていないほうが、相手に先入観を与えないで済むということ。そして、会社の人は仕事で接するだけの関係として深入りせず、線引きできるということ。あとは、私は一見定型発達の人と変わりないので、そこまでかかわりのない人には、お互い気を使わないで済むほうが楽そう……くらいかなと。
ただ、私の場合、不注意による忘れっぽさやケアレスミスなど程度がひどいので、クローズ就労にしたところで失敗しまくって、どれもあまり意味ないかもしれないという感じもしていました。
デメリットは、あえて障害について隠すことで、ドキドキ・モヤモヤしそうということ。集中力が余計散漫になりそうな気がしました。なにより、ミスの繰り返しでひどく落ち込み、立ち直れず、また適応障害(適応反応症)になるルートをたどりそうです。
ただ、その場合はおそらく環境が合っていないので、対策をとって改善できなければ、オープン・クローズ就労の前に転職や異動、働く場所を変えるほうがもしかしたら良いかもしれません。
また、同じオープン就労でも、もし障害者雇用で働いていたら、必要以上に周囲の人に気を使われそうで、私の性格では余計仕事がしづらそうな感じもしました。
オープン就労でもクローズ就労でも仕事は大変ですし、性格や環境もそれぞれなので、どちらが合うかはやってみないと分かりません。それでも、一日の大半の時間を仕事に費やす人が多いと思うので、どんな働き方や生き方が自分に合うか、いろいろと試す価値はあるのではないでしょうか。
実際のところ、オープン就労ってどうなの?と気になる方もいらっしゃると思います。私が職場のスーパーで発達障害やADHD(注意欠如多動症)のことを話した時は、いくつかお願いをしてみました。不注意優勢型のADHD(注意欠如多動症)の私ですが、コミュニケーションの面ではASD(自閉スペクトラム症)の傾向もあり、口頭での曖昧な指示は意図がくみ取りにくいので、具体的に数字にしたり、写真や紙に書いてもらったり。
「適当にやっておいて」と言われた場合は、「何個くらいですか?」と自分から具体的に聞くように意識するようになりました。
また、ミスしていたり、忘れていたりする時に、オブラートに包んだ言い方や遠回しな指摘では意図がくみきれないことが多いので、ストレートに言ってもらうようにしています(そのための言い合える関係性も大事だと思います)。
曖昧なルールや、モヤっとしていることも改めて共有できるので、自分から疑問点を解決していく仕組みづくりをするのは良いことかもしれません。自分の得意なことや苦手なこと、意見を言い合える風通しの良い環境だと、とても仕事がしやすいと改めて感じます。
職場でも友人でも、オープンにしてみて分かったことは、障害について話しても話さなくても「特に変わらない」ということでした。話したことで変に距離を置かれたりということもせず、今まで通り接してくれているので、付き合いを続けてくれている人たちは本当にありがたいです。障害の有無に関係なく、これからもいろんな人と出会えたらと思います。
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私は普段から会社の先輩たちと、最近どこに行った、何を食べた、これが楽しかったなど、なんでもざっくばらんに話しています。ADHD(注意欠如多動症)の診断を受けたことや薬を飲み始めたこともその延長でラフな感じで話しました。幸い、先輩たちは発達障害についてすでに知っていたので、話が早かったです。
障害をオープンにすることに少し似ているなあと思ったのが、LGBTQ+の方たちです。最近この話題を目にするようになって、性自認や性的指向をカミングアウトするかしないかというのが、発達障害をオープンにするかしないかに似ていると感じました。
生きづらさを感じていることで、周りに打ち明けて楽になった人もいれば、変わらなかった人、もしくはより否定的な反応をされたパターンなどいろいろあると思います。どちらにせよ、打ち明けられたことで、相手はどう対応すればいいのか分からなかったり、負担が大きくて困ってしまったりすることもあるでしょう。なので、どちらの選択をするかはその人間関係や環境、働き方に応じて柔軟に判断していけばいいんじゃないかと思っています。
今は一般雇用のパートで週5日、一日実働6時間働いています。以前と比べて、かなり生活しやすくなりました。正社員の時より、一日の勤務時間を短くしたことで、月収は減りましたが体力面でも余裕ができたのはかなりうれしいことでした。
体がダメになると心もダメになりますし、心が元気のない状態だと体も不健康になるので、本当に人間の体はよくできているなあと身をもって感じています。また、ひとりの時間やペットのリクガメたちと戯れる時間が増えたのもメンタル面でとても良いことでした。
デザイン業界からスーパー業界へと、未経験の世界に飛びこんでみましたが、うまくマッチしたので自分でもびっくりです。まず、仕事を半年以上続けられていることに驚きで、もうすぐ転職して1年経つので、仕事を継続できていることがとても感慨深いです。
運によるものもあるでしょうが、行動してみて改めて「環境は自分で変えられる」と感じました。今の時代は、会社はたくさんあるし、働き方もいろいろあるし、何度だってやり直せるので、自分の居心地のいい場所をどんどん開拓して見つけていけると良いなあと思います。
これからも、仕事でも趣味でもなんでも、自分のペースでいろいろ挑戦していきたいです。
次回は、診断前から長年悩まされている睡眠について書きたいと思います。
「環境は自分で変えられる」というのはすごく良い言葉ですね。
職場環境を変えるというのは、2つの意味があると思います。
1つは周りの人たちに自分が仕事をしやすいような環境や方法について理解してもらうことです。とはいえ、周りの人たちに働きかけてみるといっても、その環境が常に良い方向に変わるわけではありません。
2つ目は、転職など職場環境そのものをリセットしてほかの環境を選択し直すということです。オープン就労か、クローズ就労かも環境によってその判断が違ってくるかもしれません。
ざわとみさんのように、自分に合った労働時間や働き方について柔軟に考えられると良いですね。 考え方を変えるだけで過ごしやすくなるコツについてこれからもよろしくお願いします。
監修 : 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授(応用行動分析学)
公認心理師/臨床心理士/自閉症スペクトラム支援士(EXPERT)
LITALICO研究所 客員研究員