利用者数:約20名
スタッフ(職員)数:約5名
年齢層:10~60歳台、最も多い年代 20代
利用者の障害の内訳:精神障害(発達障害含む)70%、知的障害(知的発達症)※ 30%
利用頻度:週5日利用50%、週3~2回利用30%
平均工賃:約16,000円/月
時間帯:平日 9:00-16:00 ※月に1回、土曜日も営業
アクセス:小田急江ノ島線「鶴間駅」より徒歩7分
※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
株式会社ナチュラルライフサポートが運営する就労継続支援B型事業所・レインツリーは神奈川県内に4つの事業所を展開しています。共通するモットーは「働いて元気になって笑顔になろう!」。ガーデニングなどの活動を通して自然に触れ、体を動かし、食べて、疲れて、眠るという身体活動のサイクルの中で元気になること、笑顔になることを目指しています。
また、一般的に「就労継続支援B型事業所からの就職は難しい」と思われがちですが、私たちは就労支援を通して就職を目指せるB型でありたいと考えています。昨年度はレインツリー全体で8名の就職実績があり、全員が今現在も就労を継続。農園系の仕事やスーパー、大手自動車メーカー工場などへの就職実績があります。
無料会員になりませんか?
障害者雇用の求人案内が届きます!
鶴間事業所は、レインツリーのほかの事業所と比べると、まずは生活リズムを整えるために通われる方が多いのが特徴です。精神障害が約70%、知的障害(知的発達症)が約30%の割合で、ひきこもりや入院経験のある方など、さまざまな背景を持つ方が利用されています。
対人関係を築くのが苦手な方もいらっしゃるので、人と話すことに少しずつ慣れていけるよう、事業所前で野菜の販売を行い、コミュニケーションの機会をつくることもしています。
日々の活動では利用者の方それぞれのスタートラインが違うので、一人ひとりに合わせた支援を大切にしています。もちろん中には、就職を目指す方もいらっしゃるので、それぞれの目標にあったサポートにあたっています。

「利用者の方一人ひとりに合わせた支援を大切にしています」と語る所長の若菜さま
ーー具体的にどうやって生活リズムを整えていくのでしょうか?
まずは、定期的な通所が目標になります。ポイントとなるのはその方が「これならできる!」と思えるお仕事を見つけてもらうことです。「私のやるべき任された仕事」という責任感が、通所の意欲を引き出すんです。
そうした中で小さな成功経験が重なり、「もうちょっとやりたい」となって、週2日の通所が週3日に増えたり、午前中だけだった方が「もう少しきりのいいところまでやって、仕事を終わらせたい」と午後も残ったりするようになります。
時間をかけて少しずつ支援していくのが私たちの特色です。無理せず、できることからやっていきましょうという姿勢で進めています。
ーー利用者の方は主に2つの作業をされるそうですね。
はい、当事業所の大きな特徴は、屋外作業と室内作業の「二刀流」ができることです。ほかの事業所だと、例えば室内で作業して疲れたから午前中に「もう帰ります」となるかもしれませんが、私たちの事業所は外と中という選択肢があるので、外で疲れた方は、「じゃ、今度は室内で仕事してみよう」と続けられる方が多いんです。
屋外作業は、一般家庭からの依頼を受けて行うガーデニングが中心です。お客さまが「○○さん、いつも来てくれて、お庭をきれいにしてくれてありがとう」、「こちらの方は新しい方ね、うちのお庭をよろしくね」と声をかけてくださることもあります。こうしたコミュニケーションの中で自分が必要とされていると感じられるので、やる気につながり、就職に必要な社会性も育まれていきます。
利用者の方によっては、例えば「虫が苦手」ということもあるため、それぞれのスタートラインに合わせた作業を提供しています。虫が苦手な方には虫のいない場所での雑草取りから始め、抵抗がない方は職員と一緒により専門的な作業に取り組むなど、段階的にステップアップできる環境を整えています。

「ガーデニングではお客さまとのコミュニケーションもやる気につながっている」と話す職業指導員の毛塚さま(左)
室内作業は、クラフト作業が中心です。作業出しはすべての作業工程を一通りすることをやめて、ご本人の得意なものを生かす方向に変えました。いろいろと試すことで「これが苦手かな?」をまず除外し、「じゃ、これならどう?」と提案。そうすると、得意で好きな作業が何かしら見つかるんです。
さらに、地域のイベントや販売会で自分の作品を販売することで自信につなげています。自分のつくったものを買っていただくのが、とてもうれしいという声を聞きます。つまり、価値の創造が体感できるということですね。
また、クラフトが苦手な方でも、野菜の袋詰め作業や、袋にスタンプを押す作業、告知ポスターを作る作業など、全員が何らかの担当を担い、関われるようにしています。
ある利用者の方は、クラフト作業ではなかなか力を発揮できなかったのですが、野菜販売のスタッフとして、販売員として店頭に立っていただいたところ、お客さまがたくさん集まったんです。今はその方を「店長」と呼んで販売を任せるなど、自信を持って取り組んでいただいています。

「クラフトではその方の得意で好きな仕事を見つけることで、自信を持っていただいています」と話す生活支援員の平埜さま
無料会員になりませんか?
就労支援施設の案内が届きます!
ーーサポートにあたって大切にしていることは何ですか?
その方のペースに合わせて、その方にできる仕事を探して担当してもらっています。屋外作業では1時間でもいいので、外に出る機会をつくっていくと、表情が自然と豊かになっていきます。
小さな失敗で落ち込む方もいますが、レインツリーでは失敗ではなく、成長過程と捉えています。だから次の選択肢がいくらでもあります。やっているうちに、一つは得意なものが見つかる。できあがって認められ、それが次の自信につながることで、「もっといいものをつくりたい」と話す方もいらっしゃいます。
また、屋外作業と室内作業のスタッフ間の連携も大きな強みです。作業間のバトンタッチが、スムーズにできる体制ができています。外で疲れた利用者さんが生じた際は、速やかに室内の作業へスライドできるんです。
ガーデニング担当のスタッフは、もともとIT系や老人福祉の相談員だったので、ガーデニングは未経験でした。だからこそ、初めてガーデニングを習得する利用者の方の気持ちが分かります。やったことのないものを吸収すると、世界が一気に広がります。その感動を利用者さんと共有できるのが喜びです。
所長は福祉経験が長く、重度の知的障害(知的発達症)の方の入所施設や相談支援で働いてきました。加えて、障害のある子どもの利用できる施設がなく、当事者家族として悩んだ経験もあります。障害のある方が地域社会で暮らす上で、地域移行支援が推進される社会の受け皿となるところで働きたいと思い、レインツリーに転職しました。
クラフト担当のスタッフは准看護師の資格を持ち、老人ホームで働いた後、アート関係の障害者施設に転職しました。その後「障害者×植物」という組み合わせに興味を持ち、レインツリーへ。植物の知識はそれほど豊富でなかったのですが、趣味を通じて自信を持てるようになりました。「最初からできる人なんていない。すべてはやっていく中での成長と捉えていいんだよ」ということを身をもって知っています。
そのほかにも、ガーデニング・就職サポート担当の職員もいます。このように多様な経験があるスタッフの間の信頼関係も強みの一つです。職員の悩みも、利用者の方の悩みも皆で聞いて、フォロー・共有し合っています。利用者の方が相談しやすい環境になっていると思いますよ。

イベントなどで販売されるキーホルダーのクラフト作品
ーー利用を考えている方へのメッセージをお願いします。
私たちの事業所では、利用者の方、一人ひとりのスタートラインに合わせて活動しています。自分のペースで自分の得意なことを探して活動できるのが、私たちの事業所の強みです。
「ありがとう」がたくさん飛び交い、外から戻ったら「おかえり」と声をかけ合う事業所で、アットホームな雰囲気も魅力の一つです。
まずは一度、見学に来て体験してみませんか? 説明よりも体験してみるのが一番分かりやすいと思います。この場所で何ができるか?「できないことよりも、できることを探す」練習の場として利用してほしいです。
就職が本番だとすると、レインツリーではいくら失敗してもいい。その上で就職につなげられたらいいと思っています。
精神障害/週5日10:30‐15:30/工賃 1~2万円/月
ーー通所のきっかけと、現在の活動について教えてください。
友人からLITALICO仕事ナビを紹介されて、自宅から自転車で通える範囲で事業所を探し、レインツリーにたどり着きました。アットホームな環境で、自由にゆっくり取り組ませてもらえることがとてもいいですね。現在はレジンの作品やブレスレットをつくったりしています。
先日、利用者さんの特技を活かすために段ボールで「猫神社」を制作しました。私はもともとコスプレイヤーなのですが「それをここで仕事にしよう」と言ってもらえ、巫女の姿で接客したんです。折り紙が得意な別の利用者さんと協力して、猫の折り紙をおみくじに入れるなど、チームでの活動も楽しんでいます。

イベント用に段ボールで制作した神社をモチーフにした作品
イベントでお客さまが「ありがとう」と言ってくれると、作り甲斐を感じてほっこりします。コミュニケーションを取ることや接客は苦手ですが、販売会でお客さまとの交流を増やし、接客を得意にして自分の引き出しを増やしていきたいです。将来は、雑貨屋さんで接客業をしたいという目標もあります。
レインツリー鶴間事業所は、利用者の方の「そのまま」を認め、それぞれのスタートラインからの活動をサポートする温かい場所です。「ありがとう」「おかえり」が自然と交わされる、アットホームな雰囲気の中で、利用者の方一人ひとりが自分のペースで成長していける環境を提供しています。
外に出て生活リズムを整えたい方、少しずつでも体力をつけたい方、クラフト製作に興味がある方など、その方の「そのまま」を受け入れています。スタッフの皆さんの熱意と連携は、外部からも高く評価されており、多くの相談員さんがピンポイントでレインツリーのことを紹介することもあるとのこと。人とのコミュニケーションが苦手でも、サポートを受けながら小さな一歩を踏み出し、将来的には就職も視野に入れられる場所として、多くの方に支持されている事業所です。
※この記事は、2025年2月の取材に基づいています。