統合失調症で海外留学は前途多難⁉ 薬、病院、保険、エージェント選び…次々と現れる「壁」どうする?
更新 2025/05/21
公開 2025/05/23
更新 2025/05/21
公開 2025/05/23
こんにちは、ウッチーです。私はフィリピンに半年間留学した経験があります。しかし、私には統合失調症という持病があるため、何もかもがスムーズに進んだわけではありません。私の留学体験の話は、すべて話すと長くなってしまうので、全3回に分けてまとめていこうと思います。第1回目の今回は、私がなぜフィリピンに留学しようと決意したのか? そして、留学を実現するまでに苦労したことをまとめていきます。
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私はフリーランスのWebライターをしているのですが、ライティングの仕事以外にも動画共有サイトで統合失調症に関する情報を発信しています。フィリピン留学を決意した最初のきっかけは、英語の必要性を強く感じたためです。
私は個人ブログを運営しており、統合失調症の情報を紹介しています。そのブログに海外の方から問い合わせが来たり、外注で請け負っているクライアントから英語でコラムを書けないか? と相談を受けたりするケースが増え、英語の必要性を強く感じたのです。
しかし、当時の私には十分な英語力がありませんでした。実を言うと、中学時代に英検3級に落ちており、英語には自信がありませんでした。ですから、英語系の仕事はすべて断っていたのですが、いつからか、それはもったいないと強く感じ始めました。
英語は国際語と言われていますし、英語を使えたほうが、私の日々の仕事である統合失調症を伝える活動にも有利に働くと考えたのです。そこで英語を学ぼうと思い立ち、最初は独学や英会話教室に通っていました。しかし、実際に英語を使える環境で学んだほうがより早く身につくと思ったため、留学を決意したわけです。
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私がフィリピンを留学先に選んだ理由は、大きく分けて3つあります。1つ目は学費が一番安かったという点。2つ目は日本から比較的近く時差が1時間しかないという点。3つ目は授業のスタイルがマンツーマンである点。この3つです。
特にマンツーマンレッスンが主体という点には、大きく心が惹かれました。なぜなら、留学する前の私の英語力は、be動詞やアルファベットを理解し、簡単なI want to~の文章が作れるくらいだったため、先生からマンツーマンでしっかり英語を教えてもらったほうが伸びると感じたためです。
また、学費が安いという点も大きなメリットでした。メジャーな留学先であるアメリカ、カナダ、イギリスなどは、2〜3か月留学するだけでも100万円以上のお金がかかってしまいますが、フィリピンは学費の安い学校を探せば、6か月の留学が100万円で済んでしまいます。
私は本格的に英語をしっかり学びたかったため、6か月間以上留学しようと考えていました。本当は1年以上留学したかったのですが、予算との折り合いが付かなかったため、最終的に6か月間の留学に決定しました。
実際に留学が実現するまで、準備はスムーズに進みませんでした。実は留学を決意し、現地で学習できたのは1年半以上経ってからでした。そこには大きな理由がありました。まず、大きな壁として立ちはだかったのは、留学を申し込むときに利用する留学エージェントが、統合失調症についてまったく知らなかったことです。
そのため、留学エージェントによっては、統合失調症という持病があるだけで利用を断られてしまいました。最終的に、3社に絞り、その中から最も障害に理解があったエージェントを選ぶまで数か月を要したのです。また、留学エージェントが決まった後も、問題が多くありました。
まず、学校によっては統合失調症という障害がある方を受け入れていないケースがあり、そのような学校には入学できませんでした。また、受け入れ可能な学校でも用意する書類が多かったり、特別な配慮はできないという回答が多かったため、自分に適した学校を選ぶまで、非常に苦労したのです。
最終的に、障害の配慮として一人部屋を提供してくれたフィリピンの地方都市バコロドにある語学学校に入学が決まりました。
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統合失調症の患者さんが海外に留学する場合、治療薬と病院をどうするかというのは、大きな問題になります。特に海外の病院は日本と違い保険が適用されないケースが多いため、自費で通院するのは金銭的に大変だなと感じていました。
ただ、私の場合は6か月という留学期間だったため、主治医とよく相談した結果、現地の病院に通院するのではなく、6か月分の薬をまとめて持っていくという選択を取りました。私の服薬している治療薬は、半年間の処方ができたため、このような対策ができました。しかし、睡眠薬などは大量処方などができないため、このような薬を使っている方は、おそらく現地で病院を探し、薬を処方してもらう必要が出てくると思います。
いずれにしても、治療薬や病院をどうするかという問題は、統合失調症を抱えている以上、必ず乗り越えなければならない問題であるため、時間をかけて取り組む必要があります。私もこの問題をクリアするために、長い準備期間を設け、1つずつ解決していきました。
学校も決まり、学費も払い、さらに薬や病院の問題をクリアし、これでいよいよ留学できると思っていたとき、最後の難関が私の前に現れました。その問題とは「留学保険」です。海外旅行の経験がある方だと分かると思いますが、海外に行く場合、保険に入らなければなりません。
語学学校によっては、保険に入っていないと入学できないケースもあるので、必ず保険には入るようにしましょう。ただ、実際に保険に入ろうとしたとき、統合失調症という持病があると入れる保険がほとんどなかったのです。
ほとんどというか、1つしかありませんでした。それが大手損害保険会社の留学保険です。インターネットで手軽に申し込める留学保険は、統合失調症だと入れないため注意が必要です。私の場合、保険会社に電話して事情を説明し、統合失調症でも入れる保険を探してもらいました。
ただし、注意しなければならないのは、統合失調症でも入れる保険は存在するのですが、現地で症状が再発し、治療を受けたときの医療費をカバーしてくれる保険はないのです。ですから、万が一現地で再発した場合、すべての医療費は自費になります。つまり、統合失調症でも入れる保険でカバーできるのは、持病についてではなく、一般的な怪我や病気などだけなのです。
そして、現地で入院したり精神医療をすべて自費で行うのは、費用の面であまり現実的ではないため、基本的には再発したらそこで留学は終わり、帰国する流れになると思います。そのため、再発だけは絶対に避けなければならない問題なのです。
私はフィリピンに6か月留学し、無事にすべての日程をこなせました。これはきっと、事前に多くの準備をしてきたからだと思います。統合失調症でも留学はできます。しかし、障害のない方とは違って、スムーズには進まないことは十分認識しておきましょう。
障害のない方の場合、留学する半年くらい前から準備すれば十分間に合いますが、統合失調症の患者さんの場合は、その2倍、3倍の時間がかかります。ですが、裏を返せば時間をかけて準備すれば統合失調症であっても留学は可能なのです。
私の半年間の留学は充実したものになりました。私は再発をはじめ、症状が悪化することもなく、無事に過ごせたので、統合失調症の患者さんでも症状が安定しており、医師から渡航許可さえ出してもらえれば、留学の夢は叶うと思います。
次回は、実際にフィリピンでどんな学校生活を送ったのか、統合失調症という持病を持つからこそ意識した、授業や生活の様子について紹介します!
ウッチーさん、今回のコラムでも貴重な情報を共有いただきましてありがとうございました。
多くの困難を乗り越えて、留学の夢を実現されたこと、本当に感服いたします。手続きに際して、こんなにも障壁があるんですね。
病気を抱えていることで、いろいろな夢や将来をあきらめている方は少なからずいらっしゃると思います。同じように悩んでいる読者に、ウッチーさんの体験はたくさんの勇気を与えてくれます。
しかし治療に関して、6か月分の服薬を持参されたとのこと、主治医の先生の英断にも敬服いたします。最近ではオンライン診療が徐々に浸透してきたため、海外のような遠方でも画面を通じて診療ができるようになってきました。処方などの課題はありますが、ひとつの手段になってくるかと思います。
今回のコラムを通じて、留学に関してもそうですが、事前の準備がとても重要あると、私自身も勉強させていただきました。
ウッチーさんのさまざまな稀有な体験を、次回以降のコラムでも楽しみにしています。
監修 : 染村宏法
医学博士、日本産業衛生学会指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系指導医。
大手メーカーの専属産業医として勤務後、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わっている。